「希望の灯り」(2018独)
ジャンルロマンス
(あらすじ) 内気な青年クリスティアンは、深夜の巨大スーパーマーケットで在庫管理担当のバイトを始める。そこで彼は菓子部門で働く年上の女性マリオンに出会い惹かれていく。
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(レビュー) 深夜のスーパーマーケットを舞台にした青春恋愛映画。
内向的で寡黙な青年クリスティアンと彼の周囲に集う人々の悲喜こもごもと、別部署で働く訳あり女性マリオンとの恋模様がオフビートなタッチで描かれる。
時代設定が東西ドイツ統一直後というのが本作の妙味のように思う。舞台となるスーパーマーケットは旧東ドイツの郊外に位置し、まだ共産主義時代の名残を残している。無機質で広大な倉庫で黙々と働く従業員の姿はどこか全体主義的なイメージを連想させる。その一方で倉庫の中は大量の商品で溢れていて、統一直後の資本主義社会の流入を思わせる。まずはこの舞台特異な設定が秀逸だと思った。
そこにやって来るのが主人公クリスティアンである。寡黙で朴訥とした風貌とは裏腹に身体中にタトゥーが施されており、何か曰く付きの過去を持っていそうである。それは後半で明らかにされるが、このキャラクターギャップが物語の吸引力に一役買っている。
彼以外の周囲の人々も夫々に魅力的に造形されている。
クリスティアンの上司ブルーノはぶっきらぼうだが心根は優しい中年男。別の部門で働くマリオンはどこか愁いを帯びたクールな中年女性。こうしたサブキャラとの交友を育みながらクリスティアンの物語は展開されていく。
中でも、マリオンとの間にかすかに芽生える恋心は微笑ましく観れた。お互いに掴みどころのないキャラクターなので、どこかスリリングな関係に見えてくる。相手の過去を探り合いながら徐々に距離を縮めていく過程が丁寧に綴られていて中々味わい深かった。
また、ブルーノとの関係は終盤で”ある事態”が発生することで急展開を迎える。そこには東西統一後の人々の苦悩や葛藤が透けて見え、実に切なく感じられた。
監督は初見の新進監督である。抑制された演出は中々堂に入っていて、オフビートなトーンでユーモアを創出するあたりはA・カリウスマキ作品が連想させられた。クリスティアンが寡黙でポーカーフェイスを貫くキャラなので、一層そう感じるのかもしれない。
ただ、序盤の方でクリスティアンたちが職場の教習ビデオを見せられるのだが、その内容がスプラッタ映画顔負けのゴア表現が連発し少し驚かされた。このブラックユーモアは、この監督独特のものなのか?次作以降を観てみないと何とも言えない。
また、本作はほとんどがスーパーマーケットの館内で展開されるのだが、それを飽きなく見せ切った撮影監督の手腕も特筆に値する。クリスティアンたちが棚に陳列された商品を検品する様子を幾何学的構図で捉えたり、倉庫の中をアイスショーよろしく縦横無尽に移動するフォークリフトを流麗に捉えたり、限られた空間を実に多彩に捉えており感心させられた。