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「光」(2017日)星3
ジャンルサスペンス・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 東京の離島、美浜島。中学生の信之は同級生の美花と付き合っていた。父親から虐待を受けていた小学生の輔は信之を慕い、いつも彼の後をついていた。ある日、信之は美花が男に犯されているのを目撃し衝動的に男を殺してしまう。その後、島は津波に襲われ全てが流されてしまった。それから25年後、東京で夫々の人生を歩んでいた3人は数奇な再会を果たす。



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(レビュー)
 過去の殺人事件を巡って繰り広げられる3人の男女の愛憎を異様な雰囲気を交えながら描いたヒューマン・サスペンス。

 三浦しをんの原作を「さよなら渓谷」(2013日)「ぼっちゃん」(2012日)「まほろ駅前多田便利兼」(2011日)「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」(2009日)の大森立嗣が映像化した作品である。

 非常に陰鬱で凄惨なドラマであるが、要所に寓話的なイメージ映像が入り込むため不思議な鑑賞感を残す映画である。正直シビアさを求めると少し興を削がれる向きがあるが、これもまた大森監督が考えるエンタテインメント志向なのだろう。

 まず、アバンタイトルの美浜島のシーンから物語は劇的な展開で始まる。地方の村社会特有の土着的な匂いと言えばいいだろうか…。ダークな雰囲気を醸し出しており、1970年代のATG映画を観ている自分からすると何となく懐かしい匂いが感じられた。
 ただし、ここで起きる殺人現場の描写、大地震によって起こる津波の描写は完全にリアリティを失する演出で余り感心しなかった。あまりにも簡素で味気ない。

 その後、時代は一気に25年後に飛ぶ。ここから物語の視座は信之の妻に切り替わり展開されていく。先述の殺人事件に関わった3人の少年少女はどのように成長しているのか。あの事件とどう向き合っているのか。そのあたりの所がミステリアスに紐解かれていく。

 そこから分かってくるのは、津波によってかき消されたはずの25年前の殺人事件は未だに3人の人生に重くのしかかっているという事実だ。
 信之は社会的には成功しているが、心のどこかであの事件のことを引きづっている。輔は社会的に落ちぶれ果て、かつて兄のように慕っていた信之に未だに依存してる。美花は芸能界で華々しい成功を収めるが、常に自分の本当の顔が暴露されるのではないかと疑心暗鬼に駆られている。

 この3人の関係で面白いと思ったのは、信之と輔の、ある種ホモセクシャルな愛憎劇である。過去の殺人事件が無かったかのように幸せな家庭を築いている信之を見て、輔が嫉妬と憎悪を抱くのは当然であろう。しかし、その一方で輔の信之対する依存体質は幼い頃からまったく変わっておらず、どこかで愛情も抱いている。この両者の微妙な関係は実にスリリングで面白く観れた。

 しかして、終盤では凄惨な展開になっていくのだが、これには実にやるせない思いにさせられた。ここまで徹底してネガティヴに人間の心の”闇”を照射した所に凄みが感じられた。

 大森監督の作品は、いわゆる明快なエンタメとは一線を画したダークな作風が多い。時々「まほろ駅前」シリーズのような一般大衆向きな作品を撮ることもあるが、根本には今作のような反商業主義的な作家性を持っているのだろう。好き嫌いがはっきり分かれる作家かもしれないが、今の邦画界では貴重な存在だとも言える。

 キャストでは、輔を演じた瑛太の熱演が印象に残った。独特で個性的な笑い方に、彼なりの創意が感じられた。

 音楽に関しては中々ユニークだと思った。テクノビートを要所でかけながら、作品の寓話性を一層引き上げているような印象を持った。但し、音量が大きすぎるのが難である。セリフは小声が多いため音楽が耳障りに感じられたのは残念である。
[ 2022/02/13 00:03 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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