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黒い雨

時節柄こういった作品を観るのも良いかもしれない。
黒い雨 デジタルニューマスター版黒い雨 デジタルニューマスター版
(2004/07/23)
田中好子

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「黒い雨」(1989日)星5
ジャンル人間ドラマ・ジャンル戦争
(あらすじ)
 1945年8月6日、広島に原爆が投下された。郊外に疎開していた矢須子は、爆心地付近の叔父夫婦の家に向かう途中、黒い雨を浴びてしまう。5年後、矢須子は叔父夫婦と小さな村で暮らしていた。幸いにして叔父夫婦に原爆後遺症は出ておらず、矢須子も健康状態を維持していた。叔父重松の目下の悩みは矢須子の結婚のことだった。あたかも直接被爆したかのような噂を流されて縁談が中々まとまらなかったのである。重松はその疑いを晴らそうと、これまでの日記を書き綴りそれを見合い相手に見せる。そのかいあって、ついに見合いは成功するのだが‥。
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(レビュー)
 被爆者達の過酷な運命を淡々としたタッチで描いた今村昌平監督の作品。

 原爆投下の惨状を圧倒的な描力で綴った序盤にノックアウトされた。余りのショッキングな地獄絵図に衝撃が走る。但し、川に浮かぶ死体はどう見ても人形で、これはいただけなかったが‥。
 以降は後遺症に苦しむ村人達の姿が、スケッチ風に綴られていく。
 主に矢須子の縁談を中心にしたドラマだが、それ以外に重松と妻の夫婦愛、戦友達の友情、特攻帰りの青年の苦悩といったサブエピソードが平行して綴られていく。いずれも戦争の惨さを物語っていて痛々しい。

 しかし、映画というものは誠実一辺倒で描いてしまっては見ている方としても疲れてしまうものである。その意味からも、今村監督はユーモラスな息抜き場面を所々に挿入して、作品を硬軟自在のトーンで調整している。このあたりのバランス感覚は流石に上手いと思った。

 例えば、特攻帰りの青年・悠一はバスのエンジン音を聞くと戦場を思い出して気が変になる。それを彼の母親や村人達が取り押さのだが、映画はこのシークエンスを反復している。そして、ついには通りすがりの人間までそれに加わることになり、思わず笑ってしまった。このシーンは戦争後遺症の悲惨さを描いたものだが、家族をはじめとした村の共同体意識、愛情がほのかに感じられる。そして、それがたまたま村に来ていた部外者にまで派生していく‥という所に可笑しみを感じる。
 この他にも、重松と戦友達の釣りのシーン、時計の針を直すシーンといった日常風景にも、ほのぼのとしたユーモアが感じられた。
 暗く重苦しいトーンが続く中に、こうしたホッと息をつかせるシーンがあることで、この映画は随分と救われているような気がした。

 もちろん、ひとたびテーマ追求の手綱を引き締めにかかる後半には、こういったシーンは段々見られなくなってくる。このあたりのしたたかさ、大胆さも、熟練監督ならでは自信が伺える。堂々たる反戦映画になっている。

 そして、物語の締めくくり方にも感心させられた。
 得てしてこの手の反戦映画は、メッセージを声高らかに発して作品の印象度を強めようとする傾向にあるのだが、その点本作はまったく逆である。実に静かで、それでいてズシリと重く受け止められるようなエンディングになっている。メッセージが押し付けがましくなっていないところが良い。答えは与えられるよりも、自分で見つけた方が重く感じられるものである。
[ 2008/08/07 15:08 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(2)

原爆はピカドンではなく、ピカ(核反応)、シャー(放射能放出および熱線)、ドン(爆風)、ジワジワ(放射能障害)といいますが、この映画のテーマはシワジワの恐怖ですね。核兵器の本当に怖い。
[ 2009/03/21 21:50 ] [ 編集 ]

確かに、この映画は最初こそ核兵器の恐ろしさを衝撃的に描いてますが、その後はジワジワと観客に訴えてきますね。そこが忘れられない作品だと思います。
[ 2009/03/23 01:22 ] [ 編集 ]

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