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ザ・スイッチ

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「ザ・スイッチ」(2020米)star4.gif
ジャンルホラー・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 地味で冴えない女子高生ミリーは、凶悪な殺人鬼“ブッチャー”に襲われる。一命をとりとめるも、翌朝目が覚めると心が入れ替わっていた。ブッチャーの体になった自分を見て驚くミリー。一方でミリーの体に入ったブッチャーは、学園に侵入して次なる獲物を狙う。



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(レビュー)
 殺人鬼と心が入れ替わってしまった女子高生の奔走をスピーディーな展開で描いたコメディ・ホラー。

 「君の名は。」(2016日)や「転校生」(1982日)等、これまでも心と肉体が入れ替わる男女逆転の映画は色々とあったが、本作もそれらと同じ系譜に入る作品である。
 そもそもこの手の入れ替わりコメディは古くからあるプロットで、それこそシェイクスピアの時代から存在する。SFやファンタジーの要素を用いることで、昨今このひな形は更に華やかさを増してきているが、基本的にこの手のプロットは今でも全然通用する魅力的なものである。

 本作では、曰く付きの呪われし短剣によってミリーとブッチャーの心が入れ替わってしまう。入れ替わる当事者のギャップが大きければ大きいほどこの手のストーリーは面白くなるのだが、そこを今回は地味で平凡な女子高生と凶悪な連続殺人鬼にすることで面白く見せている。

 監督、脚本を務めたクリストファー・ランドンの演出も冴えわたっている。一部ゴア表現もあるので観る人を選ぶが、基本的には軽妙な作りに徹しており終始楽しく観ることができた。やっていることは「ハッピー・デス・デイ」(2017米)「ハッピー・デス・デイ2U」(2019米)と同じ殺人鬼との鬼ごっこで余り変わり映えはしないのだが、安定した面白さを堪能できる。

 そんな中、ミリーの心を持ったブッチャーと彼女の母親が試着室で語らうシーンは印象に残った。試着室なので当然お互いの姿は見えない。声だけで会話をするのだが、母親は相手がミリーとは知らず、一方のミリーは相手が母親だと知っている。ここでミリーふんするブッチャーとミリーの母親がイイ感じになって笑ってしまうのだが、一方で亡き夫との思い出、ミリーに対する愛などが語られ幾ばくかセンチメンタルに演出されている。シチュエーションの巧みさも相まって中々の名シーンになっているのではないだろうか。

 また、昨今何かと話題のジェンダー問題をさりげない形で忍ばせているのも中々周到である。男女の性差、体力差という如何ともしがたい現実がミリーとブッチャーの戦いの中で表現されている。

 もう一つ、本作の貢献者として挙げたいのが、ブッチャーを演じたヴィンス・ヴォーンである。彼の好演なくして本作は成り立たなかっただろう。見た目は凶悪な殺人鬼の大男、中身は女子高生。この複雑なキャラクターを実に楽しそうに演じている。乙女走りがツボにはまって何度も笑ってしまった。

 本作で惜しいと思ったのは二点ある。
 一点目はミリーの姉の扱いである。内気で落ちこぼれなミリーと違って彼女は優秀でクールな警官である。その対比自体は良いのだが、これが物語の中で上手く活かされておらず勿体なく感じた。警官という設定も今一つ機能していない。
 もう一つは、そもそも事の発端となった”曰く付きの短剣”の扱いである。劇中ではそれらしく説明されていたが、なんだかアッサリと片付けられてしまった印象である。この辺りをサスペンスフルに物語に絡められたら、本作は更に面白くなったように思う。
[ 2022/03/15 00:47 ] ジャンルコメディ | TB(0) | CM(0)

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