「マーターズ」(2007仏カナダ)
ジャンルホラー・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 1970年初頭のフランス。行方不明になっていた少女リュシーが監禁場所から命からがら脱出して保護される。養護施設に収容されたリュシーは、同じ年頃の少女アンナの献身的な支えによって少しずつ心身の傷を癒していった。それから15年後、リュシーは過去の復讐を果たすために、ある平穏な一家の元を訪ねる。
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(レビュー) 監禁虐待のトラウマを抱える少女の復讐劇を壮絶な暴力描写を交えて描いたサイコホラー。
序盤のリュシーの凶行に圧倒されてしまうが、物語は中盤で思いもよらぬ展開に突入し、最後まで面白く観ることが出来た。単なるホラー物と思っていると足元をすくわれる快作である。
ただ、正直なところ前半のリュシーが見る”幻覚”にそれほど驚きはなかった。ホラー映画では、よくある仕掛けて余り新味は感じられない。
ところが、本作は中盤で物語の視座の転換が起こり、意外な展開に突入していくのだ。ここから薄気味悪い社会派スリラーのようになっていき、ある種
「ホステル」(2005米)のような見世物小屋的なきな臭さも加わり、ますます緊張感が増していくようになる。
更に、ラストでは驚愕の結末が待ち受けている。果たしてアンナの最後の言葉は噓だったのかどうか?そして、その言葉の受けた老女は何を思ってああいう行動に出たのか?単純にスッキリとしない終わり方に、色々と想像してしまいたくなる。
監督、脚本は新鋭のパスカル・ロジェ。ジャンル映画を主に撮っている作家だが、今作を見る限り単純にそうとは思えない資質を感じさせる。
演出は非常に粘着的で、特に後半の拷問シーンにおける容赦のなさは筆舌に尽くしがたいものがる。直接的な表現は案外控えめで、それなのにここまで人間の残酷性を引き出せるというのは、やはり監督の力量なのだろう。ここまでくると、ある種の性癖を穿ってしまうのだが、それもまたこの監督の作家性なのかもしれない。
リュシーとアンナを演じた女優たちの熱演も本作の大きな見どころの一つである。体当たりの演技とは正にこういうことを言うのではないだろうか。
尚、エンドクレジットでダリオ・アルジェントに捧ぐと出てくるのだが、その意味についてはまったく分からなかった。特にアルジェント作品との共通性は感じられないのだが…。