L・マル監督が渡米前に撮った1本。とんでも映画になってしまった。
「ブラック・ムーン」(1975仏西独)
ジャンルファンタジー
(あらすじ) ある所に男と女が戦争している国があった。少女は男装して男達の検問所を突破しようとするが正体がばれてしまう。そして、森に佇む一軒の屋敷に逃げ込んだ。そこには寝たきりの老婆と、美しい姉弟、裸の子供達が住んでいた。孤独な老婆は鼠相手に理解不能な言葉で話している。すると突然目覚し時計が鳴り老婆は苦しみ始めた。姉弟が駆けつけどうにか一命を取り留める。安心する少女だったが、今度は弟から誘惑を受ける。それを見た姉は嫉妬して‥。
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(レビュー) L・マル監督版「アリス」の世界といった感じの作品。映画冒頭で「夢の世界へようこそ~」というメッセージが出てくるが、正にめくるめく迷宮世界が繰り広げられていく。不思議な味わいを持った作品だ。
ストーリーは一応あることにはあるが、真面目に追いかけていくと余り面白くない。何しろ整合性のない場面転換や、俳優達のエキセントリックな言動、幻聴幻覚現象が飛び交い、理解不能な部分が多いからだ。
個々のシーンは美しく撮られていて面白いと思うのだが、全体を通してみると分からずじまいのことが多くフラストレーションが溜まる映画だった。
例えば、なぜ男と女は戦争しているのか?裸の子供達や近親相姦の姉弟、寝たきりの孤独な老婆、蛇や鷹、これらは何のメタファーなのか?この屋敷は天国なのか?エデンの園なのか?色々と想像出来るが余りにも抽象的過ぎて、見終わった後にはひたすら悶々とするだけだった。
ただ、少女から女、母親へと成長していく通過儀礼のドラマであることは読み取れた。ユニコーンが重要なキャラクターとして登場するが、これは”少女”の純潔をイメージさせるものである。少女は弟とのセクシャルなコミュニケーションを経て、老婆に母乳を与える”母親”へと成長していく。言わば、これは女の一生を描いた映画なのだと思う。極めて風変わりな作品だが案外テーマ自体は通俗的なものに思えた。