「孤狼の血 LEVEL2」(2012日)
ジャンルサスペンス・ジャンルアクション
(あらすじ) 亡き先輩刑事・大上の後を継いだ日岡は、一匹狼となって広島・呉原市の裏社会に安定をもたらすべく奔走していた。そんなある日、五十子会の上林という男が7年の刑期を終えて出所する。彼は自分の服役中に殺された五十子会長の仇をとることに執念を燃やしていた。こうして呉原一帯に再び抗争の嵐が吹き荒れる。
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(レビュー) 2017年に製作された
「孤狼の血」(2017日)の続編。
前作でコンビを組んだ大上が不遇の死を遂げ、たった一人になった新米刑事・日岡のその後を描いた作品である。呉原市一帯に抗争の火種を持ち込む五十子会の若頭・上林との戦いを過激なバイオレンス描写を交えて描いている。
尚、第1作には原作があったが、今回は完全にオリジナルストーリーということである。
製作陣は前作と一緒ということで、前作を楽しめた人なら今作も十分に楽しめるだろう。元々、本シリーズはかつての東映実録ヤクザ路線のオマージュで出来上がっており、そのテイストは今回も引き継がれている。
ただ、前作であれだけ勇ましく成長した日岡が、思ったよりも弱々しくなっていて少し意外であった。大上とはキャリアも年齢も違うのだから比べても仕方がないが、どうしても迫力不足を感じてしまう。ここは大上とは違った形で日岡ならではの強さみたいなものを出しても良かったのではないだろうか。例えば、彼の登場時は頭の切れるエリートという触れ込みだった。その特徴を活かして尾谷組に睨みを利かせるなど、大上とは違った方向性で魅力を引き出して欲しかった。
本作のトピックは何と言っても上林の強烈なキャラクター。これに尽きるだろう。こちらは十分過ぎるくらいの存在感を見せつけている。
演じるのは鈴木亮平。元々、彼は役作りにのめり込むタイプの俳優で、
「HK/変態仮面」((2013日)では徹底した肉体改造に挑み強い印象を残した。今回は一部やりすぎと思えるほどの凶暴性を前面に出しながら、もはやスラッシャー映画の殺人鬼のごとき怪演を見せている。その狂気をじみた演技は凄まじいの一言だ。
例えば、自分を体罰した看守の妻を襲撃する序盤のシーン。嬉々として彼女の両眼を抉り潰すという残虐性を見せつけ度肝を抜かされた。鈴木亮平はもともと体格がいいし、そこに予測不能な凶暴性が加わったとあっては、もはや誰も敵わないと思えてしまう。
余りにも上林のキャラクターが際立っているため、他がかすんでしまうという弊害もあるが、ともかくも彼の存在感でこの映画は持っているという気がした。
物語は、日岡対上林の戦いの他に、上林の組員である通称チンタのドラマ、日岡とコンビを組むことになったベテラン刑事瀬島のドラマも用意されている。
チンタは複雑な家庭環境を背負った出自であり、そこに上林の過去との相関が認められる。その関係から日岡は彼を上林組に潜り込ませてスパイをさせるのだが、その顛末は余りにも非情で何とも居たたまれない気持ちにさせられた。
瀬島は、飄々とした顔とは裏腹に意外な顔を持っており、そのギャップが終盤で明かされることでグンとキャラクターが引き立つ。中村梅雀というキャスティングも奏功しており、いかにも人のよさそうなキャラは適役と言えよう。鈴木亮平共々、本作では美味しい役どころとなっている。