「クエシパン~私たちの時代」(2019カナダ)
ジャンル青春ドラマ
(あらすじ) カナダのケベック州、先住民インヌ族の少女ミクアンとシャニスは幼い頃から一緒に育った親友同士。ミクアンはクラブで出会った白人男性フランシスと付き合い幸福な日々を送る。その一方で、シャニスは粗暴な夫グレッグと幼な子を抱えて辛い日々を送っていた。そんなある日、グレッグが暴力事件を起こして逮捕されてしまう。
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(レビュー) ケベックの先住民保留地で暮らす二人の少女の友情と成長を描いた青春映画。
カナダの先住民居留地を舞台にした映画というと、二人のシングルマザーが違法密入国に手を染める
「フローズン・リバー」(2008米)という作品が思い出される。白人から搾取されてきた先住民の歴史が垣間見れる骨太な社会派サスペンス映画だった。
本作にはそこまでの強い人種偏見は見られない。ミクアンたちは学校でも町のコミュニティでもあからさまな差別を受けていないし、何となく上手くやっている。とはいえ、この手の差別は中々消えることはないというのが実情だろう。表向きは白人との共同生活を円満に送っているように見えて、実は彼らの中には明らかに白人に対するコンプレックスが存在している。本作はそれを物語の端々で観る側に突きつけている。
ミクアンは大好きなフランシスと一緒にケベックの大学に進学することを約束する。しかし、彼女の両親はそれに反対する。インヌ族の娘が白人ばかりの都会で上手くやっていけるはずがない…と勝手に決めつけて娘の独立を認めないのだ。この年頃の子によくある都会への憧れ、それを阻害する親との対立というドラマ自体はありふれたものであるが、そこに人種問題を絡めたところが本作の妙味となっている。
ミクアンが高台に上って自分が住む保留地を眺めるシーンが印象に残った。「昔より小さくなった気がする」と吐露する彼女に成長の一途が感じられ感慨深く観れた。
もう一つ本作の見所と言えば、ミクアンとシャニスの友情である。映画は彼女たちの幼少時代から始まる十数年に渡る半生のドラマとなっている。その友情はクライマックスで大きな転換を迎えるのだが、これまでの二人の友情が反芻され切なく観れた。
本作で残念だったのはラストの締めくくり方である。ハッピーエンドにしようというのは決して悪いことではないが、余りにも唐突、且つメロウすぎて白けてしまった。そこに至る過程が説得力を持って描かれていれば納得できるのだが、そこを完全にすっ飛ばしてしまっているため素直に受け入れがたいものがある。
キャスト陣は実際にインヌ族の居留地に住んでいる人々でキャスティングされているということである。馴染みの俳優は一人も登場して来ないが、リアリティという点で言えばこのキャスティングは奏功している。
ミクアン役の女性も決して美人とは言えないが、そこがかえってこの物語に説得力をもたらしている。シャニス役の女性のパンキッシュな造形もキャラクターの生き様が反映されていて良かったと思う。
リアリティということで言えば、本作にはインヌ族の日常も生々しく再現されている。調べてみて分かったのだが、彼らはトナカイを狩猟して暮らしているということだ。台所でトナカイを当然のように解体するので驚いてしまったが、実際にこうしたことがあるのかもしれない。