「リムジン LIMOUSINE」(2016スペイン)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 人気女優アマンダは映画賞の授賞式に出席するために豪華なリムジンに乗って会場へ向かった。ところが、突然ドアがロックされて見知らぬ土地に連れていかれてしまう。リムジンに監禁されたアマンダは、不気味な声の主に淫らな行為を強要される。
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(レビュー) リムジンに監禁された女優の恐怖を緊張感みなぎるタッチで描いたシチュエーション・スリラー。
リムジンという限定された空間。主要人物が3人。80分弱というランタイム。低予算な映画であることは間違いないが、その制限を逆手にとったミニマルな語りが奏功し中々面白く観れる作品だった。
言ってしまえば、逆恨みを受けたセレブの受難という物語で、特に捻りもなく犯人の正体も容易に想像できてしまうのだが、本作の面白さはそこだけではないような気がする。最大のチャームポイントは、アマンダを演じた女優が一人二役で犯人役も演じているという点にあるように思う。
様々な顔を演じ分ける女優という職業を、ある種シニカルに具現化したのが、この一人二役というキャスティングにあるのではないだろうか。
華やかな舞台で活躍するアマンダ。彼女の影で泥水を飲まされた犯人。これは正に女優という職業の”明”と”暗”を示唆している。同じ外見をした二人が立場を分け隔てた原因は、ちょっとしたタイミング、偶然の積み重ね、人脈やスポンサーといったところにある。そう捉えると、この物語は残酷なショウビズ界を実に皮肉的に描いていると言える。
監督、脚本は本作が長編デビューの新鋭らしい。取り立てて目立った作家性は感じられないが、リムジンの内装を独特の色彩感覚で見せた映像センスは中々のものである。
難を言えば、ラストにもう少し余韻が欲しかったか…。割とアッサリと終わってしまったのが勿体なかった。
尚、本作を観て、D・クローネンバーグ監督の
「コズモポリス」(2012仏カナダ)を連想した。実業家青年がリムジンに乗ったまま物語が展開される変わった構成の映画だったが、シチュエーションが本作とよく似ている。