「ストックホルム・ケース」(2018カナダスウェーデン)
ジャンルサスペンス・ジャンルコメディ
(あらすじ) 1973年、スウェーデンの首都ストックホルム。何をやっても上手くいかないラースは銀行強盗を決行する。幼い娘を持つ行員のビアンカら3人を人質に取って立てこもり、警察との交渉で旧知の仲間であるグンナーを刑務所から釈放させることに成功するが…。
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(レビュー) 実際に起こった銀行襲撃事件をユーモアを交えて描いた実録クライムサスペンス。
人質がいつしか犯罪者にシンパシーを覚えていくようになる”ストックホルム症候群”は、今回の事件から来ているということである。
実際はどうだったのか分からないが、かなりユーモア色が強い作品である。この手の作品と言えば真っ先にシドニー・ルメット監督、アル・パチーノ主演の「狼たちの午後」(1975米)が思い出されるが、それと比べてみると随分と安穏とした雰囲気で、銀行強盗の緊迫感は薄みである。それはひとえに主人公ラースのキャラクターからくる”緩さ”であろう。事実はどうだったのか?そこが少し気になってしまった。
もっともエンタテインメントとして割り切って観れば中々楽しめる作品である。ワンシチュエーションで展開されるドラマ、上映時間約90分というコンパクトさは大変観やすい。この手の事件に付き物の警察権力やマスコミに対する皮肉も適度に盛り込まれていて風刺性も感じられた。
そして、本作最大の見所となるのが強盗犯のラースと銀行員ビアンカの交流である。粋がって銀行に押し入ったものの、相棒のグンナーがいなければ何もできない半人前なラース。平凡で退屈な夫にどこか満たされないでいるビアンカ。二人は今回の立てこもり事件をきっかけに次第に惹かれあっていく。その過程が殺伐としたシチュエーションにほのぼのとした味わいをもたらしている。
ただ、ラースの少しドジで情けないキャラにビアンカが自然と心を許してしまうのは分かるのだが、果たしてそれが恋愛感情までに発展するのは流石にどうだろうか?映画を観る限り、説得力という点で今一つ弱い気がする。夫々のバックストーリーに深く踏み込めていないせいで安易に思えてしまった。
キャストでは、ビアンカを演じたノオミ・ラパスの地味な出で立ちが新鮮だった。漫画みたいな大きな丸メガネは時代性を考えるとアリだろう。役柄という点でも、この造形は説得力を与えていると思った。
また、グンナー役を演じたマーク・ストロングは珍しく長髪姿を披露している。
「キングスマン」(2014米)等のイメージが強すぎてどうしてもスキンヘッドのイメージが強いのだが、今回の意外な風貌は新鮮であった。