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JUNK HEAD

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「JUNK HEAD」(2017日)星5
ジャンルアニメ・ジャンルSF・ジャンルアクション
(あらすじ)
 人体を無機物に転化する技術により、人類は生殖機能を代償に不老不死を手に入れた。しかし、新種ウイルスの発生によって人類は存続の危機に陥ってしまう。遥か昔に創造した人工生命体「マリガン」に生殖能力の可能性を見出した人類は調査を開始するのだが…。


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(レビュー)
 人類存続の危機を救うために地下世界を調査する旅に出た男の冒険をストップモーション・アニメで描いたSF作品。

 スチームパンクとダークファンタジーを掛け合わせたような世界観に圧倒される。どこか既視感が拭えない部分もあるが、しかしこの独自な世界観を貫徹したことで、本作は他に類を見ない独特な作品になっていると思う。

 本作を手掛けたのは堀貴秀。監督、脚本、編集、撮影、美術、音楽、キャスト等、ほとんどを一人で兼務し、約7年という歳月をかけて完成させたということである。ここまでの情熱と時間をかけたことは驚異的としか言いようがない。真の意味での自主製作作品ということが出来よう。
 尚、元々は30分の短編作品で、それをボリュームアップして1時間40分の長編作品にしたということである。その際、数名のスタッフが手伝ったということである。

 ただ、正直に言うと、アニメーション自体は決してクオリティが高いというわけではない。世界を見渡せばアードマンやライカといった大手スタジオが製作した作品が存在する。「ウォレスとグルミット」シリーズや「チキンラン」(2000英)、「コララインとボタンの魔女」(2009米)「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」(2016米)等、それらの流麗なアニメーションに比べるとさすがに作りが粗い。
 ただ、逆にこの粗さがかえって”手作り感”を醸し出していて、自分には親近感が持てた。例えるなら、レイ・ハリーハウゼンのような朴訥さと言えばいいだろうか。製作上の制限が関係しているのかもしれないが、それがかえって本作にアニメーションの原初的な魅力をもたらしているような気がした。

 物語も面白く追いかけていくことが出来た。
 頭部だけになってしまった主人公が、行く先々で様々なパーツで身体を手に入れていくという、死と再生を繰り返すプロットは神話的である。実際に主人公は地下に住む人口生命体「マリガン」たちから「神サマ」と呼ばれ、さながらイエスキリスト(救世主)のような存在になっていく。これはマリガンが人間そっくりの姿で作られていることを併せ考えてみても、「人間」=「神」と解釈できよう。もっとも、その割にぞんざいな扱いを受けている所がシニカルで面白いのだが、いずれにせよ物語はシンプルでありながら人間と神、生と死といった哲学的な深みを感じさせる内容となっている。

 要所の伏線も実に周到に張り巡らされていて感心させられた。実に気が利いた作劇になっている。

 また、地下世界に住むキャラクターたちも非常にユニークで面白かった。ただし、少し不気味なクリーチャーが多いので好みは分かれると思う。個人的には「エイリアン」(1979米)の影響を強く感じた。
 そんな異形のモンスターが多い中、赤いコートを着た少女型マリガンは抜群のインプレッションを残す。彼女の存在は、ある種ロマンスとまではないかないが、ドラマに膨らみを持たせるという意味でも貴重である。尚、本作は三部作になる構想があるということらしいが、仮にそうなるとしたらこの少女型マリガンはそのキーパーソンになるかもしれない。それほど魅力的なキャラクターだった。
 他に、いつも一緒に行動する”三バカ兄弟”も良い味を出していた。

 映像演出も素晴らしい。ハリウッド張りなアクションは単純に痛快であるし、地下世界の広大さを実感させるスケール感のあるショットも映画的魅力に溢れている。

 キャストも堀監督がほとんど一人で何役もこなしている。実際にはない架空の言語が使用されており、全ての会話に字幕がついている。敢えて人種や国を超えた無国籍風な作りに徹した所も大変ユニークである。
[ 2022/06/15 00:38 ] ジャンルアニメ | TB(0) | CM(0)

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