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愛しのアイリーン

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「愛しのアイリーン」(2018日)星3
ジャンルロマンス・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 42歳になる独身男・岩男は、パチンコ店で働きながら年老いた母と認知症の父と暮らしていた。同僚のシングルマザーに手痛い失恋を食らった彼は、一念発起してフィリピンの嫁探しツアーに参加する。そこでアイリーンという少女を見つけて帰郷する。ところが、彼のいない間に父はすでに他界していた。母ツルは勝手気ままな岩男たちを見て怒りを爆発させる。


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(レビュー)
 冴えない田舎暮らしの男とフィリピン人女性の壮絶な愛憎を独特のユーモアで綴った作品。同名コミック(未読)を「ヒメアノ~ル」(2015日)の吉田恵輔監督が実写映画化した作品である。

 「ヒメアノ~ル」も負のパワーに満ちた作品だったが、本作も鬱々とした感情を抱えた男が主人公という点で共通する。ただ、「ヒメアノ~ル」は負の感情が暴力という形で外に向かって発散されていたのに対し、今作はひらすら内向きで見てて非常にストレスがたまる作品だった。いずれも人間のネガティブな感情を描いた作品であるが、鑑賞感は大分異なる。

 前半はコメディライクで後半はシリアスというのも、両作品に共通するテイストだ。観ようによっては統一感がないという意見もあろうが、予想できない面白さがあるのも事実で、自分は最後まで興味深く観ることが出来た。

 主に前半は田舎あるある的な面白さで観れた。隣近所に噂話は筒抜け。縁談の話を持ってくる世話焼きばあさん。行きつけのスナック。そうした閉塞的な地方社会が、やや紋切り的ながらよく描けていると思った。

 但し、楽しく観れるのも中盤までで、移民女性に売春の仕事を斡旋するヤクザが登場してからは、ハードなサスペンスに切り替わる。

 しかして、悲しい結末へとドラマは向かっていくのだが、これは見ようによってはバッドエンドともハッピーエンドとも取れる終わり方となっている。表面だけを捉えれば悲恋のラストなのかもしれないが、岩男のアイリーンに対する愛が完遂されたと捉えれば、これは実にロマンティズム溢れるエンディングと言えよう。恋愛ドラマとしてみれば中々骨のある結末で、いわゆる通俗的な作品とは一線を画したエンディングになっている。

 敢えて難を言えば、後半のサスペンスに余りリアリティが感じられない点だろうか…。ある重大な刑事事件が起こるのだが、いくら小さな田舎町とはいえ余りにも緊張感が薄く、岩男たちの切迫した状況がうまく伝わってこなかったのが残念である。
 もう一つは、母ツルの口から出る”姥捨て山”というのフレーズにも唐突な感じを受けた。そのための伏線は中盤で張られているのだが、それだけでは不十分な感じがした。

 吉田監督の演出は前作同様、テンポが良く小気味よい。エネルギッシュな暴力描写も流石に上手く、クールに突き放した演出や毒を利かせたオフビートなユーモアも堂に入っている。

 例えば、岩男のオナニーを覗き見するツルの罪悪感と切なさは、その後の岩男とアイリーンのセックスを覗き見する行為へと継承されている。息子を想う母の複雑な感情を見事に表現しているわけだが、更に自身に思いがけず生理が訪れるという奇跡まで起こり、何とも言えぬ笑いがこみ上げた。

 キャストではアイリーンを演じたナッツ・シトイの熱演が素晴らしかった。彼女は自国ではすでに数多くの作品で活躍しているとのことだが、日本映画に出演するのは今回が初めてである。
 ツル役の木野花は終始オーバーアクト気味で、確かに面白いことは面白いが、少しやり過ぎという気がした。
[ 2022/07/12 00:46 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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