「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(2020米英)
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ) スペクターとの戦いの後、現役を退いたボンドはマドレーヌとイタリアで平和なひと時を過ごしていた。そこで過去と決別するため、かつて愛したヴェスパーの墓を訪れる。ところが、スペクターの罠により負傷してしまう。マドレーヌへの疑いを拭いきれない彼は彼女と決別した。5年後、ボンドの元に旧友であるCIAのフィリックスが訪れる。ロシア出身の細菌学者ヴァルドを救出して欲しいと依頼されるのだが…。
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(レビュー) ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの第5作にして最終作。これまでのシリーズを観てきた人にとっては正に大団円と言って良い終わり方となっている。長年続く本シリーズだが、ここまで完全にシリーズにケリをつけたのは初の試みではないだろうか。人によっては賛否あるかもしれないが、個人的には実に潔いと思った。
尚、本作を鑑賞する上で、前作の
「007/スペクター」(2015英米)と
「007/カジノ・ロワイヤル」(2006米)は観ておいた方が良いだろう。何の説明もないまま話は進んでいくので、未見の人は初っ端から置いてけぼりを食らいかねない。
今回も、序盤のカーチェイスに始まり、アクションとサスペンスの連続に飽きることなく最後まで楽しむことが出来た。ただ、上映時間2時間40分越えはさすがに長すぎるという感じがした。本来であればもう少し切り詰めてエンタテインメントとして気軽に楽しめる長さにできたように思う。
例えば、アナ・デ・アルマス演じる女性エージェントとボンドの共闘は、観てて大変興奮させられたが、ストーリー的にはさほど重要というわけではない。彼女のキャラクターがいなくても物語上さして問題になるようなことはなく、むしろいない方がテンポは良くなったように思う。
逆に、今回の適役であるラミ・マレック演じるリュートシファーの魅力が今一つ引き出しきれておらず、ボンドとの戦いも随分とアッサリとケリがついてしまったな…という印象を持った。
「ボヘミアン・ラプソディ」(2018英米)の大ブレイクからの大抜擢だと思うのだが、存在感という点で少し物足りなく感じた。物語の内容を詰め込み過ぎてしまったために割りを食ってしまったという印象である。
そもそも本作は新007の登場や毎度のMI5の御家騒動、マドレーヌの過去の因縁など、全体的にドラマが散漫である。この中で最も大きなドラマとなるのがマドレーヌの因縁だが、確かにそこについては上手く構成されていると思った。しかし、それ以外は、中途半端にされてしまった感じがする。
何はともあれ、クレイグ版ボンドはこれにて最後ということで、お疲れさまでしたと言いたい。当初は今一つピンとこないボンドだったが、観て行くうちに徐々に違和感なくなっていったボンドだった。個人的に、どうしても初代ジェームズ・ボンドのイメージが強いので仕方がないのだが、それでもこれまで演じてきた様々なボンドの中でも、クレイグ版ボンドは初代ボンドに次ぐハマリ役だったように思う。内容的にも
「007/スカイフォール」(2012英米)のような野心作もあり、充実したシリーズだった。
果たして次のボンドは誰が演じるのか、大変気になる所であるが、今後もこのシリーズは延々と続いていくのだろう。次の新シリーズを楽しみにしながら待ちたい。