「ジュテーム・モワ・ノン・プリュ」(1976仏)
ジャンルロマンス
(あらすじ) クラスキーはパドヴァンとゴミ回収の仕事をしながら熱い友情で結ばれていた。ある日、2人はカフェでボーイッシュな女性、ジョニーと出会う。クラスキーはゲイだったが彼女に惹かれていく。パドヴァンはそんな二人を見て嫉妬するのだが…。
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(レビュー) ゲイのカップルとボーイッシュな女性の三角関係をスタイリッシュに綴った恋愛映画。
監督、脚本、音楽はセルジュ・ゲンズブール。ヒロインのジョニー役はジェーン・バーキン。二人は1969年に本作と同じタイトルの曲「ジュテーム・モワ・ノン・プリュ」をデュエットソングとしてリリースしている。自分はこの曲のことを全く知らなかったのだが、wikiによれば男女の性交について描いた歌ということで一部の国では放送禁止になったくらい卑猥な内容ということである。残念ながら本編中にこの曲は流れないが、歌詞の内容に近いセクシャルなシーンは出てくる。そういう観点でみると、本作はセルジュのセルフ・オマージュと言えるのかもしれない。
それにしても、本作はジェーン・バーキンの体を張った演技が凄まじい。製作当時、セルジュとは交際中だったと思うが、ここまで大胆なヌードシーンを撮影していることに驚きを禁じ得ない。演じさせる方も演じさせる方だが、それに応える方も応える方だ。
一番衝撃的だったのは、バーキンが野原で小便をするシーンを真後ろから写したショットである。カメラから見たら丸見えである。正直、この演出は物語上、特段必要というわけではない。一体セルジュとバーキンはどういった気持ちでこれを撮影したのだろうか?
物語の内容は、取り留めもない三角関係の恋愛劇である。ただ、カフェの店主のパワハラや退屈な田舎暮らしに疲弊したジョニーのストレスがじっくりと描かれているので、ドラマの軸はしっかりと感じられた。本気度が感じられる赤裸々なヌードシーンの甲斐もあって、決して浮ついた恋愛談になっていない。
セルジュ・ゲンズブールの演出も非常にクールで、カットによってはヌーヴェルヴァーグ的なセンスも感じられる。
例えば、カフェのカウンターを正面から捉えたロングショットなどは構図と空間、インテリアの色彩もバッチリ決まっており、中々抜け目のない画面作りをしていると思った。
また、物語の主な舞台は広大な荒野にポツンと立つカフェであり、どこかアメリカン・ニューシネマのような雰囲気が感じられるのも面白い。全編フランス語による作品であるにもかかわらず、不思議とアメリカンな空気が感じられる所がユニークである。
尚、本作はセルジュ・ゲンズブールの初監督作品となる。その後、数本長編映画を撮っているが、歌手活動の方が忙しいせいか、監督作は決して多くはない。彼の作品は初見であるが、本作を観る限り中々の演出センスを感じさせるので、機会があれば他の作品も追いかけてみたい。