「友情にSOS」(2022米)
ジャンルサスペンス・ジャンルコメディ
(あらすじ) 卒業を目前に控えた黒人の大学生クンレとショーンはパーティをハシゴする“全制覇ツアー”を予定していた。ところが、その夜、部屋に知らない白人女性が酔いつぶれて倒れていたことから予定は狂ってしまう。警察を呼ぼうとするクンレに対し、ショーンは自分たちが怪しまれるからやめろと反対するのだが…。
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(レビュー) 泥酔した白人女性を介抱しようとするクンレ達の選択がどんどん事態を悪化させていくところに、ヒッチコック監督の「ハリーの災難」(1955米)のようなブラックコメディ・テイストを感じる。ただ、その一方で、クンレとショーンの友情にホロリとさせられたり、人種差別に対する作り手側の問題意識が垣間見れたり、全体的に硬軟織り交ぜた作風になっており中々侮れない作品になっている。
まず、出自や性格が全く異なるクンレとショーンのやり取りが面白い。クンレは成績優秀な優等生。ショーンは落ちこぼれの劣等生。本来であれば住む世界の違う二人であるが、幼い頃からお互いを知っているということで、実にいいコンビ振りを見せている。時に冗談を言い合い、時に喧嘩もする。そんな二人の友情が、この一件で危機に陥る。
そして、本作にはもう一人、重要な主要キャラが登場してくる。それが二人のルームメイトのカルロスである。彼もまた非白人ということで、学内ではあぶれ者である。衝突するクンレとショーンの間を取り持つ緩衝材的な役割を担っていて、この3人のバランスがドラマを回すうえで非常に上手く機能している。
全体的にスラップスティックなテイストが強めで笑える作品になっているが、終盤にかけてシリアスに転じていくのも意外性があって面白い。
また、すべてを丸く収まて大団円としなかった所には作り手側の気骨が伺えた。今回の事件で経験した人種差別の恐怖は、クンレに一生拭い去ることのできないトラウマとして植え付けたことは確かである。その恐怖を暗示するかのようなラストの演出は白眉である。
尚、IMdbによれば監督と脚本は夫々に本作が長編2作目の新鋭ということらしい。二人は本作の元となったショートフィルムを製作しており、そちらがかなり高く評価されて今回の長編製作に繋がったということだ。
演出は軽妙にまとめられているし、話のテンポも軽快でストレスフルに観れる。昨今この系統の作品ではジョーダン・ピールのような才能も登場しており、どうしてもインパクトという点では見劣りしてしまうが、本作も中々どうして。エンタメ性と社会派的なメッセージが見事なバランスで融合された快作になっている。