「幸福路のチー」(2017台湾)
ジャンルアニメ・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 台湾に生まれたチーは、大人になった現在は故郷を離れ、アメリカで暮らしていた。ある日、祖母の訃報が届き久しぶりに帰郷する。すっかり変わってしまった景色に戸惑いつつ、ふと子供の頃の夢に思いを馳せるチーだったが…。
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(レビュー) 郷愁に満ちたドラマで、誰もが感情移入できるハートウォーミングなアニメーション作品になっていると思う。
まず、映像面で言えば、チーの夢想シーンがまるで絵本のような手書き風のタッチで描かれ、どことなくNHKの「みんなのうた」を連想させられた。ややぶっ飛んだトリップ感もあるが、アニメらしいファンタジックな描写は映像としては中々のインパクトがある。
また、フリーハンドで描いたような背景美術も独特で、全体的に温もりに満ちた画面設計になっている。色彩も暖色トーンで統一されており、大変観やすいと思った。
作品から受ける印象は「ちびまる子ちゃん」や「三丁目の夕日」といった日本の昭和テイストである。台北を舞台にした物語であるが、きっと日本人でも親近感が湧くのではないだろうか。
尚、後から知ったが、本作は同監督が製作した短編アニメが元になっているということである。台湾では長編アニメを製作する体制がなく、監督自ら製作スタジオを立ち上げ4年かけて本作を完成させたそうだ。正直、アニメーションその物のクオリティは決して目を見張るような出来栄えではないが、そういった事情を鑑みれば、それも止む無し。むしろ、よくここまでの作品を作り上げたと感心させられる。
物語もシンプルながら、一人の女性の生き方を真摯に語っていると思った。キャリアと結婚に悩むチーの葛藤は、きっと同じ境遇に立たされている人が観たら共感を覚えるだろう。
ただ、チーの親友でベティという女の子が出てきて、二人の友情が現在と過去にまたいで描かれるのだが、そこに少しの視座のブレを感じてしまった。それまでチーのモノローグで統一されていたドラマが、急にベティのモノローグに切り替わりストーリーが二つに分岐してしまう。そのため観てて若干の戸惑いを覚えた。
個人的には回想パートの方に面白さを感じたが、中でもチーとベティとウェンの3人の交友が実に活き活きと描写されており終始微笑ましく観れた。3人が屋根に上がって夕日に向かって日本のアニメ「ガッチャマン」の主題歌を歌うシーンが良い。台湾では「ガッチャマン」がそんなに人気があったとは知らなかった。