「吐きだめの悪魔」(1986米)
ジャンルホラー・ジャンルコメディ
(あらすじ) ニューヨークに住む酒屋のエドは、自分の家の地下から、60年前のワインを見つけ、それを1本1ドルで売り出した。ところが、それを飲んだ人は体が溶けて死亡してしまう。この事件を追うことになった警官ビルは、浮浪者のリーダー、ブロンソンに出会い、事態を収めようと奔走するのだが…。
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(レビュー) 汚物まみれのビジュアルと下ネタ満載なギャグが強烈な伝説のカルトムービー。
物語自体はあってないようなもので、とにかくドロドロと溶け出す人体描写を見せ場としたB級ホラーである。
のっけからスゴイことになっているが、その手の物が好きな人にはたまらないものがあるだろう。自分はここまでグチャグチャな物を見せられると、ある意味で潔さを感じてしまうが、観る人が観れば生理的に全く受け付けないという人がいても不思議ではない。思い出されるのはピーター・ジャクソン監督の出世作
「ブレインデッド」(19992ニュージーランド)である。あれもゴア描写のやりすぎで完全に笑うしかなかった。
ただ、くだらない、下世話と一蹴できない見所もある。それは本作で監督を務めたロビー・ミューロの演出手腕である。
彼は本作を自主制作で撮り、これが認められハリウッドの名カメラマンへと昇り詰めていく。そして、ポール・ハギス監督の「クラッシュ」(2004米)で見事に英国アカデミー賞でノミネートされた。その後も「ラッシュアワー3」(2007米)や「PARKER/パーカー」(2013米)といったアクション作品に参加しながら第一線で活躍する撮影監督になっていく。その出自を知るという意味では、本作は大変興味深く観れる作品である。
実際、クライマックスのアクションシーンなどはスローモーションを巧みに操りながら見事な盛り上がりを見せている。また、各所のアクション繋ぎも流麗で、インディペンデントのデビュー作とは思えぬセンスの良さが感じられる。本作の撮影監督は彼がやっているわけではないが、低予算、少人数の自主製作体制ということを鑑みれば、本人がカメラを覗いている可能性は大いにある。
先述したように物語自体はかなりいい加減で、中には不要に思えるエピソードもあり、正直中盤は退屈してしまった。ブロンソンのベトナム帰還兵というバックストーリーも、気を利かせているつもりだろうが、本筋に余り関係がなく、何のために用意したのかサッパリ分からなかった。
尚、最も印象に残ったのは、浮浪者の切断された局部を使ったフットボールのシーンだった。はっきり言って”くだらない”の一言である。しかし、その”くだらなさ”に本気で取り組んでいる所が、いかにもアマチュアらしくてイイ。この”くだらなさ”はメジャーでは再現不可であろう。