「悪魔の沼」(1976米)
ジャンルホラー
(あらすじ) テキサス州の町はずれにある小さなモーテル。そこには片足が不自由な男ジャドが住んでいた。そこに一人の娼婦がやって来る。そのモーテルには巨大なワニが飼われている池があり…。
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(レビュー) モーテルに住む連続殺人鬼の恐怖を描いたホラー映画。
「悪魔のいけにえ」(1974米)で衝撃的なデビューを果たしたトビー・フーパー監督の長編第2作である。1930年代のテキサス州で起こったジョー・ボール事件を元にした映画で、元となった事件はwikiでも記事になっているので興味のある人は参照されたし。
物語は存外シンプルで捻りや意外性に欠けるのが難点だが、映像は中々凝っていて魅せるものがある。赤の原色を多用した照明効果が恐怖を盛り上げ、一種異様な雰囲気を創り出している。おそらくモーテルのシーンはほぼセット撮影と思われるが、ここまで照明にこだわった所に、トビー・フーパーの才気が感じられた。ダリオ・アルジェント監督の「サスペリア」(1977伊)や「インフェルノ」(1980米伊)の極彩色なトーンに近いものを感じる。
また、映像とともに音へのこだわりも随所に感じられる。ジャドが聴いてるラジオからは常にカントリーミュージックが流れており、それが殺伐としたシーンに悪趣味的なユーモアを加味している。更に、カントリー・ミュージックの裏側には恐怖に怯えて泣き叫ぶ少女の声を小さくかぶせるという徹底ぶり。観る側の深層心理に不快感を植え付けるような音の設計は脱帽である。耳障りな電子音も効果的に恐怖を演出している。
このように映像と音については大いに見応えが感じられる作品である。
ただ、いかんせん肝心のストーリーがゆるゆるで、正直退屈してしまった。元となった事件はかなり凄惨で、そこを上手く脚色できてなかったという印象である。
やりようによっては、殺人鬼ジャドも、もっと魅力的に造形できただろうが、「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスのような不気味さには程遠い。かなり異様な風貌で熱演しているが、それが怖さに直結しないというのは、やはり演出と脚本に問題があるからであろう。実に勿体ない。
尚、「エルム街の悪夢」シリーズのフレディ役でお馴染みロバート・イングランドが脇役として登場してくるのでファンなら一見しておきたい。