「FOUND ファウンド」(2012米)
ジャンルホラー・ジャンル青春ドラマ
(あらすじ) 11歳の少年マーティは、学校では虐められ、家では両親の愛を受けられず鬱屈した日々を送っていた。ある日、兄の部屋のクローゼットからボストンバッグを見つける。その中には切断された生首が入っていた。
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(レビュー) 兄の秘密を知ってしまった少年の恐怖を描いたホラー作品。
前半は間延びした展開が続きやや退屈するが、兄の異常な行動に徐々に惹かれていくマーティの心理は中々興味深く観れる。
無力な自分を救ってくれるヒーローだと思っていた兄が、実は裏では連続殺人鬼だったという恐怖。しかし、それを知っても尚、兄は自分に対して優しく頼もしい存在であることに違いはないという事実。兄の表裏の顔に翻弄されるマーティのスリリングな心情が、この物語を面白く見せている。
しかして、ラストはとんでもないことになってしまうのだが、これには実にやるせない気持ちにさせられた。ホラー映画でこのような不思議な気持ちにさせられたことが、かつてあっただろうか。凄惨で異常でありながら、マーティの心情を察するとどこか悲しみを禁じ得ない。
監督、共同脚本は初見のスコット・シャーマーという新鋭である。本作が氏の初長編作品ということだ。低予算の処女作ということで、多少の作りの粗さは見受けられる。事件性を無視した話作りにも無理を感じた。
ただ、そうした粗さはあれど、ここぞという所で見せるパワフルな演出は相当なもので、特に中盤でマーティが見る「Headless」というホラービデオは特殊メイクを含め相当力が入っている。ホラービデオという体に合わせて敢えて作り物臭さを全開にしているように見えるが、その胡散臭さも含め”映画”=”見世物”としての醍醐味が存分に感じられた。エログロナンセンスの境地といった感じである。
ちなみに、本作で直接映像として表現されるゴア描写はこのシーンのみである。兄の殺害行為などは一切描かれず、クライマックスまでそれは徹底されている。
今作の白眉は何と言ってもこのクライマックスシーンで、ここも被害者の悲鳴のみで表現されており、それがかえって想像を喚起させ余計に残虐性を際立たせている。先のホラービデオの映像が効果的に効いている。こうした計算高い演出にスコット・シャーマーの才気が感じられた。
尚、先述したホラービデオであるが、同じ「Headless」(2015米)というタイトルで後に製作されている(日本未公開)。スコット監督はプロデュースに回り、別の者が監督を務めているようだが、ティーザーを見る限り内容は本編で描かれていたものと同じような感じであった。