「軍中楽園」(2014台湾)
ジャンルロマンス・ジャンル戦争
(あらすじ) 台湾と中国が激しい緊張状態にあった1969年。台湾の青年兵士バオタイは、最前線の島“金門島”に配属される。しかしカナヅチであることが判明し、“軍中楽園”と呼ばれる娼館を管理する部隊に左遷されてしまう。彼はそこで、どこか影のある娼婦ニーニーと出会い惹かれていくのだが…。
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(レビュー) 戦時下の娼館を舞台にした作品というと栗原小巻主演の
「サンダカン八番娼館 望郷」(1974日)を思い出してしまうが、こちらは娼館で働く青年兵士を主人公にしたメロドラマ風な作りになっている。「サンダカン~」のような娼婦の生態や悲劇的運命といったものも、本作では描かれてはいるが、あそこまでの重苦しさはないので割と取っつきやすい印象を持った。演出や脚本が全体的にライト志向なので観やすい。
主人公パオタイとニーニーの関係を巡る純愛もさることながら、本作で一際印象に残ったのはパオタイの士官長ラオジャンと人気娼婦アジャオの関係に迫った愛憎劇だった。アジャオの小悪魔的な魅力の虜になっていくパオタイの破滅は中々見応えがあった。
また、パオタイの同僚ホワシンと若い娼婦の刹那的な生き様も中々に良い。ホワシンは裕福な家庭の子息で、そのせいで軍隊では先輩たちから理不尽な虐めを受けるようになる。その現実を忘れるようにしてやって来た軍中楽園で、彼は自分と同じように悪辣な客たちから乱暴を受ける若い娼婦と出会い惹かれていく。その顛末は、ある程度予想はできたものの、実に痛ましくやるせない思いにさせられた。
ただ、このホワシンと若い娼婦の顛末にしてもそうだが、先述したように作りが全体的にライト志向なので、変にロマンチズムに傾倒しすぎてしまった感がする。
映像的にも、娼館の景観が色彩トーン含め美麗すぎるし、ホタルや砲火等のCGもどこか無理に美しくロマンチックなものとして作りすぎている感じがした。娼婦たちの悲しい運命を考えれば、本来ロマンティックであってはならないはずであり、そこはリアリティを重視すべきではないだろうか。
また、パオタイ、ラオジャンやホワシンといった主に男性キャラの造形が全体的に紋切的で、物語を浅いものにしてしまった感がある。
一方のニーニーやアジャオたち、女性陣は魅力的に造形されていて良かったと思う。ニーニーの秘密の過去もミステリアスで惹きつけられたし、アジャオの本音が曝け出る後半の”見顕し”シーンも見応えがあった。
また、ニーニーがパオタイの誕生日にプレゼントした男物の腕時計には色々な想像が掻き立てられる。客から貰ったものなのか?前夫の持ち物だったのか?そして、それを一度は受け取ったものの、娼館を去るニーニーに返すパオタイの心境は如何なるものだったのか?エンディングを見ながら、この腕時計の意味について色々と想像してしまった。