fc2ブログ










悪魔スヴェンガリ

pict2_200.jpg
「悪魔スヴェンガリ」(1931米)星3
ジャンルサスペンス・ジャンル古典
(あらすじ)
 パリの下町に住む貧乏な音楽教授スヴェンガリは、相手を自分の意のままに操る不思議な魔力を持っていた。ある日、同じ下宿に住む若い画家たちのアトリエに行くと、そこでモデルとして日銭を稼ぐ可憐な娘トリルビーと出会う。その美しさに惹かれたスヴェンガリは、彼女をオペラの檜舞台に立たせてやろうとするのだが…。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 原作は古典的な名作ということで(未読)、これまでに何度も映像化されている作品である。IMdbによれば最古の映像化は1914年ということだから、かなり古くから愛されていることが分かる。今作も戦前の作品ということで、映像や芝居は流石に古いが、ドラマ自体は今見ても十分に通用する普遍性を持っていると思った。

 怪しい雰囲気を漂わせたスヴェンガリの造形から、一見すると怪奇映画のようなイメージを想像する。
 確かに、スヴェンガリが白目を剥いて魔力を発動するクローズアップに、同年公開の「魔人ドラキュラ」(1931米)のベラ・ルゴシのような恐ろしさが感じられる。しかし、こうしたハッタリを効かせたホラー的演出は極わずかで、基本的にはドラマを語ることに専念しており、分かりやすい例を挙げれば「オペラ座の怪人」のようなメロドラマとなっている。ファントム(悪魔)に魅せられた人間の悲しい性。ゲーテの「ファウスト」のようなドラマでもある。

 そして、この悪魔スヴェンガリは随所でオフビートなユーモアを醸している。そのため、どこか憎めないキャラクターとなっている。ラストで彼が採った”選択”も物悲しさを覚える顛末で、そうした彼のキャラクター性が本作に一定の味わいをもたらしている。

 また、ドイツ表現主義的な美術セットと技巧的なカメラワークも特筆に値する。特に、映画前半の舞台となるスヴェンガリが住む下町の造形は、総じて曲線的な作りで、それが「カリガリ博士」(1919独)のような一種異様な雰囲気を創出している。
 カメラワークでは、スヴェンガリの部屋とトリルビーの部屋を繋ぐ疑似1カット映像がダイナミックで、時代を考えればかなり画期的且つ実験的な試みをしていると言えよう。

 スヴェンガリを演じるのは「グランド・ホテル」(1931米)でガイゲルン男爵を演じていたジョン・バリモア。両作品を見比べてみると、まったく方向性が違う役柄で面白い。尚、彼は現在も活躍する女優ドリュー・バリモアの祖父である。
[ 2022/09/30 00:50 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/2135-ec4fac6b