「リビング・デッド・サバイバー」(2017仏)
ジャンルホラー
(あらすじ) サムは元カノから私物を返してもらうために、彼女の部屋を訪れる。ちょうど彼女主催のパーティーがやっていた所で、人混みが苦手な彼は個室で過ごしていた。すると、そのまま寝入ってしまう。翌朝、目を覚ますと外の様子がおかしいことに気付く。パーティーの参加者は姿を消し、街中がゾンビであふれかえっていた。
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(レビュー) ゾンビに支配された世界で孤独を感じながら必死にサバイバルを繰り広げていく青年の姿を、淡々と綴ったホラー作品。
ジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」(1978米伊)がゾンビ映画の基本形を作ったことは今更述べるまでもないだろう。本作はその「ゾンビ」にオマージュを捧げつつ、”対ゾンビ”という所ではなく、孤立無援の状態になった主人公サムの孤独に焦点を当てた作品である。昨今この手の映画はアクションかホラーテイストで押しまくる作品が乱造されているが、それらとは一線を画した異色作となっている。
また、サムの非社交性は映画冒頭でプレマイズされているので、このサバイバル劇がどこか皮肉的に見えてくるのも面白いところである。「ゾンビ」におけるショッピングモールの日常シーンが大量消費社会に対する皮肉だと言われているが、ここでも同じようなシチュエーションを用いて”引きこもり”という現代的なテーマが語られているような気がした。最初は自分一人の天下だと思って能天気に過ごすが、食料が底を尽き、ライフラインがストップすると、次第に孤独に耐えきれずサムは精神を病んでいくようになる。
同様の視点で描かれていたゾンビ映画と言えば
「ゾンビ・ランド」(2009米)が思い出される。あれも主人公の青年は引きこもりという設定だった。しかし、本作とは真逆のアプローチで描かれており、両作品を比べてみると興味深いものが見つかる。
映画は後半からサラという女性が表れて、いよいよアパートからの脱出劇というサスペンスとアクション性が強まっていく。その顛末も意外なもので面白かった。
サラ役はゴルシフテ・ファラハニ。先頃観た
「バハールの涙」(2018仏ベルギージョージアスイス)で印象的な女性兵士役を演じていた彼女である。ここでも凛とした佇まいで芯の強いヒロイン像を作り上げている。
また、エレベーターに閉じ込められた中年ゾンビも中々印象的であるが、こちらはレオス・カラックスの盟友ドゥニ・ラヴァンが演じている。カラックスと作り上げた”怪物メルド”を想起させる怪演が継承されている。
尚、結末について投げっぱなしという否定的意見もあるようだが、個人的には決してそうは思わなかった。むしろ、「ゾンビ」オマージュとして考えれば至極納得のエンディングではないだろうか。