「ザ・レッスン 女教師の返済」(2014ブルガリアギリシャ)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 小学校教師ナデのクラスで盗難事件が起こる。盗んだ生徒に申し出るよう促すが犯人は名乗り出なかった。その日、帰宅すると家のローンを夫が使い込んで借金していたことが発覚する。期日までに返済しないと家は競売にかけられ小さな娘とともに路頭に迷うことになってしまう。ナデは金策に奔走するのだが…。
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(レビュー) 借金の返済に奔走する女性教師の受難を静謐なタッチで描いたサスペンス作品。
甲斐性無しの旦那のせいで窮地に追い込まれていくナデの姿を冷徹に描いているので、観てて実に居たたまれない気持ちにさせられた。基本的にドキュメンタリータッチが貫かれており、終始ヒリつくような緊張感が味わえた。連想させられるのはダルデンヌ兄弟の作品である。この監督の作品は初見であるが、独特のタッチを持った作家性で面白いと思った。
また、途中でナデが銀行に振り込みに行くシーンがあるが、ここはタイムリミット感を持たせた演出でかなりハラハラさせられた。こうしたサスペンスフルなシーンも中々上手くできている。
そんな不幸な境遇に追い込まれるナデを観てるとついつい同情してしまいたくなる。ただ、同時に頑なに自らの正義とプライドを貫く姿には、もう少し肩の力を抜いて生きればいいのに…という感想も持った。
不仲な父と折り合いをつければ金を借りることが出来ただろう。悩み事を相談できるような友達がいれば助けてもらうことだって出来たかもしれない。しかし、彼女はいわゆる優等生タイプで、これまですべて自分一人の力で解決してきたのだろう。周囲に相談できず、その結果どんどんドツボにハマってしまう。
ラストは賛否あるような終わり方になっている。いわゆる観客に想像を委ねるようなエンディングになっている。個人的にはバッドエンドを想像した。
さて、改めて考えてみると本作は実に皮肉的な物語だと言える。冒頭で生徒の窃盗を糾弾したナデ自身が、最後はああいう”選択”をしてしまうとは想像できなかったからだ。
果たして彼女は、これからどんな顔をして子供たちに授業をするのだろう?それを考えると、これほど意地が悪い顛末もない。