「クー!キン・ザ・ザ」(2013ロシア)
ジャンルアニメ・ジャンルSF・ジャンルコメディ
(あらすじ) 世界的に著名なチェリストのウラジーミルとDJ志望の青年トリクは、モスクワの街角で異星人と遭遇する。トリクが異星人の持っていた空間移動装置を迂闊にいじってしまい、2人はキン・ザ・ザ星雲の惑星プリュクにワープしてしまう。そこには「クー!」と奇妙な挨拶をする異星人が住んでいた。2人は、そんなプリュク星人に翻弄されながら地球に戻るべく旅を始めるのだが…。
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(レビュー) 1986年に製作されたSF映画
「不思議惑星キン・ザ・ザ」(1986ソ連)の監督ゲオルギー・ダネリアが自らリメイクしたアニメ作品。
オリジナル版は独特なオフビートなタッチとシュールな世界観が唯一無二の魅力を醸し出しており、カルト的な人気を誇っている作品である。また、当時の社会事情などを併せ考えると冷戦時代の風刺として捉えることも可能で、ジャンル映画という枠組みを超えた奥深さを持った作品としていまだに語り継がれている。
それを改めてリメイクしたというからには、おそらくダネリア監督の中に何か狙いがあるのだろうと思った。ただ、一部設定が変更になっていることを除けば、物語自体はオリジナル版をほぼ踏襲しており、時代の変化とともに何か別のメッセージが発せられているわけではない。どうせリメイクするのであれば、今の時代ならではの新解釈を見せて欲しい気もしたが、最初からそういうつもりはなかったのだろう。
ただ、オリジナル版が持つ普遍的なメッセージは現代でも十分に通用する力強さを持っている。プリュク星の貧富の格差は現代の格差社会を照らし合わせて見ることもできるし、砂漠と化した惑星に地球温暖化の問題を見ることもできよう。
また、アニメーションとして表現されたSFガジェットの数々は、イマジネーション豊かに再現されており、オリジナル版よりも先鋭化されている。プリュク星の住人も大変奇抜な造形にリニューアルされており、このあたりはアニメならではの表現力と感じた。
オリジナル版は大分前に観たので、ストーリー自体は所々忘れていたのだが、今作を観ることで色々なシーンがよみがえり懐かしい思いにもさせられた。
尚、ダネリア監督にとってはこれが遺作となってしまった。実は、本国では大変人気の高い映画監督であるが、残念ながら日本では「不思議惑星キン・ザ・ザ」の他に数本しか紹介されていない。いつの日か日本でも再評価される日が来て欲しいものである。