「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」(2016カナダアイルランド)
ジャンルロマンス・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 小さな田舎町で叔母と暮らしていたモードは、幼い頃からリウマチを患い手足が不自由なため、一族から厄介者扱いされていた。ある日、彼女は家政婦募集のビラを目にする。早速、募集先の家を訪ねると、理不尽で暴力的な男エベレットが現れ…。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) カナダに住む女性画家モード・ルイスの伝記映画。
自分は彼女のことを全く知らなかったが、カナダでは知らない人がいないほどの人気画家ということである。なんでも、かのリチャード・ニクソン大統領も彼女の絵を注文したということらしい。
彼女は貧しいながらも自分の好きな絵を描きながら、武骨で気難しい夫エベレットと幸福な人生を歩んだそうである。本作はその絆をしっとりとした味わいで描いている。優しさに溢れた作風は、誰が観ても楽しめる作品ではないだろうか。
キャスト陣の好演も素晴らしい。
モードを演じたサリー・ホーキンスは
「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017米)のイメージが強いが、その時の演技との共通性も垣間見れた。今回のような少し伏目がちで内向的な役をやらせると本当に上手くハマる女優だ。
一方で、エベレットを演じたイーサン・ホークも、口数が少ない粗野で昔気質な男という新境地を開き、演技の幅の広さを見せている。
物語は、序盤こそモードの不幸な境遇を紹介する展開が続くため観てて辛いものがあるが、エベレットとの共同生活が徐々にこなれてくるあたりからはユーモアも出てきて面白く観ることが出来た。
モードの絵が人気になって次々と注文が殺到してくると、エベレットの魚売りよりも儲かるようになり、それまでの家政婦と雇い主という主従関係が完全に逆転してしまうところが可笑しい。
例えば、モードが絵を描くのに夢中になると、エベレットは気を利かせて部屋の掃除を始める。ところが、絵の具が乾かないうちから埃を立てるなと締め出しを食らってしまうのだ。今までの傲慢さはどこへ行ったのか、まるで借りてきた猫のようにすごすごと追い出されてしまう姿にクスリとさせられた。
物語が後半に入ってくると、モードも驚く衝撃の事実が判明し、これもドラマを感動的に盛り上げていた。
本作で欲を言えば、肝心のモードの絵をもっと見せて欲しかったか…。彼女が絵を描く姿は頻繁に出てくるが、それがどんな絵だったのかは余り出てこない。
モードはキャンバスだけでなく、板切れや、家の壁、小物など、描けるものなら何にでも描いていた人で、作品数は相当数に上る。それらを映画の中でもっと見てみたかった気がする。