「真夜中のゆりかご」(2014デンマーク)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) アンドレアス刑事は妻アナと赤ん坊と幸せな日々を送っていた。ある日、通報を受けて駆け付けた先で、薬物依存のカップルに育児放棄された乳児を発見する。保護しようにも法律の壁に阻まれ、無力感に苛まれるアンドレアス。そんな中、アンドレアスは思いも寄らぬ悲劇に見舞われる。
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(レビュー) 幸福な夫婦が、ある悲劇によって、残酷な運命に飲み込まれていく様をシリアスに綴ったヒューマン・サスペンス。
アンドレアスが糞尿まみれで放置される赤ん坊を発見する冒頭のシーンからして、相当ショッキングだが、本作はそれだけで終わらない。ある悲劇に見舞われたアンドレアスは、取り返しのつかない行為に及んでしまうのだ。
真面目で良心の人だったアンドレアスが、ほとんどサイコパスのような行動に出るところに多少違和感を持ったが、しかし彼の止むにやまれぬ複雑な心中は理解できなくもない。しかして、彼は更なる不幸な事態に陥ってしまう。
ただ、自分は、当初から妻アナにもどこか様子がおかしい所があり、この結末にさほど驚きはしなかった。よくあるミスリードで、サスペンスとして見た場合、少し物足りなさも感じた。
監督は
「未来を生きる君たちへ」(2010デンマークスウェーデン)のスサンネ・ビア。「未来を生きる君たちへ」も非常に重厚な作品だったが、今作も作品のトーンは終始重苦しい。
特に、取調室でアンドレアスと薬物依存の母親との間で交わされる視線のクローズアップにはドキリとさせられた。まるでアンドレアスの秘密を見透かしたかのような鋭い眼光は、ホラー映画顔負けの恐怖で印象に残った。
脚本はスサンネ・ビアと長年コンビを組み続けているアナス・トマス・イェセン。先述の「未来を生きる君たちへ」も彼の原案脚本である。本作も「未来を~」も、社会問題を題材にしつつ、そこに上手くホームドラマのエッセンスを落とし込んだところが共通している。今回はシンプルなプロットながらエンタテインメント性を弁えた語り口でグイグイと牽引しており、中々引き込まれた。また、どこまでも陰惨なドラマであることは確かなのだが、かすかな救いで締めくくるあたりにこの作家の優しさみたいなものを感じた。
ただし、本作は大きな突っ込み所があり、若干詰めの甘さを感じなくもない。今回の事件はDNA鑑定すれば一発で分かってしまうのではないだろうか?というか、それ以前に普通はバレるような気がするのだが…。