「パレードへようこそ」(2014英)
ジャンル人間ドラマ・ジャンル社会派・ジャンルコメディ
(あらすじ) 1984年、不況に揺れるサッチャー政権下のイギリス。各地で炭坑の閉鎖が決まり、それに抗議するため炭鉱夫はストライキを始めた。ロンドンに暮らすゲイのマークは、そのニュースを見て彼らを支援しようと、仲間たちとゲイのパレードで募金活動を行う。そして、“LGSM(炭坑夫支援レズビアン&ゲイ会)”を立ち上げ、全国炭坑労働組合の活動を支援していく。
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(レビュー) ゲイの炭鉱労働組合支援団体”LGSM”の創設とその活動をユーモアを交えて描いた実話ベースの作品。
当時のイギリスの不況を描いており、一連のケン・ローチの作品や
「THIS IS ENGLAND」(2006英)といった作品が思い出された。これらの作品には、働き口がなく日々、漫然と過ごす人々の鬱積した苛立ちが克明に記されていた。ただ、同じ時代に照射したドラマでも、こちらはハートフルな味付けが施されており大分取っつきやすい作品になっている。誰が観ても楽しめる作品になっているのではないだろうか。
また、当時は同性愛者に対する世間の目も相当厳しく、マーク達が肩身の狭いを思いをしていたことも確かだろう。ただ、これも割とあっさりと炭鉱夫たちに受け入れられる。そこにどうしてもご都合主義を感じてしまうが、そこはそれ。エンタテインメントとして割り切ればストレスなく観れるので、多くの人に共感できるのではないだろうか。
リーダーシップを執る熱血漢マークを筆頭に、LGSMのメンバーも個性的に造形されており、彼らのやり取りが物語を飽きなく見せている。ダンスが特異な舞台俳優のジョナサン、ゲイであることを家族に隠しているジョー、レズビアンのステフ等。バラバラな彼らが世間の偏見に晒されながら一体となって結束する所には爽快感が感じられた。
一方の炭鉱労働組合にも個性あふれるキャラクターが揃っている。
中でも、印象に残ったのはビル・ナイ演じる労働組合の書記係クリフだった。大人しい性格の彼は後半、ある大役を任されるのだが、そのプレッシャーに耐えられなくなってしまう。そして、同僚に”ある秘密”を告白をするのだが、このシーンはペーソスに溢れていて良かった。
ただ、これだけ様々な人間ドラマを盛り込んだ結果、映画としては若干まとまりに欠く内容となってしまった感は否めない。内容の詰め込み過ぎで、展開が性急に映る場面も幾つかあった。こういうのはテレビシリーズでじっくりと描いたほうが良いのかもしれない。