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新・仁義の墓場

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「新・仁義の墓場」(2002日)star4.gif
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 石松は沢田一家の総長を敵の銃弾から守ったことから、杯を交わして組に入る。高級クラブの新人ホステス智恵子に目を付けるや力ずくで自分の女にしてしまうと、山東会の組員が総長を批判したと聞きすぐさま彼を殺してしまった。刑務所に服役した石松は、そこで義友会の若頭今村組組長と懇意になり義兄弟の絆で結ばれる。それから5年。出所した石松は沢田一家の出世頭になっていくのだが…。

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(レビュー)
 深作欣二監督の「仁義の墓場」(1975日)を現代に舞台を移し替えてリメイクした作品。

 内容はオリジナル版と異なり、無鉄砲なヤクザ石松の破滅的な生きざまに焦点を当てた作りになっている。
 石松役の岸谷五朗の怪演が凄まじく、2時間10分の長尺ながら飽きることなく観ることが出来た。剃り込み、パンチパーマ、眉剃りと、外見からして気合の入った役作りである。しかも、物語途中からクスリ漬けになってしまうため、後半はほぼラリッた演技を貫き、狂気めいた鋭い眼光に、一体何を考えているのか分からない危うさと不気味さが感じられた。

 特に後半、警官に取り囲まれてパンツ一丁で銃を乱射するシーンは、ドキュメンタルな演出も相まって強烈なインパクトを残す。他にも、糞尿を垂れ流しながら階段を這い上がるなど、体を張った熱演が印象に残る。

 監督は三池崇史。Vシネから頭角を現してきたこともあり、その流れから極道物をたくさん撮ってきた作家である。多作な監督なので全てを観ているわけではないが、個人的には「日本黒社会 LEY LINS」(1999日)や「DEAD OR ALIVE 犯罪者」(1999日)の過激でダークなユーモアが印象深い。そんな氏が、かつての傑作ヤクザ映画をリメイクするというのだから、ただの焼き直しになろうはずもない。

 オリジナル版とは違った狂気が作品全体に充満しており、一触即発の危うい雰囲気にゾクゾクするような興奮が味わえた。岸谷演じる石松のやりたい放題のバイオレンスの連続は、正に”三池印”といった感じである。

 何と言っても石松の新鮮なヤクザ像が作品を持たせているという気がした。極道で重んじられる義理や人情もどこ吹く風。人の話を一切聞かずに即座に暴力に訴え出る、その直情的な性格は正に獣その物。兄弟分・今村の恩を仇で返し、愛する女房・智恵子をクスリ漬けにしてひたすら快楽を貪り尽くす。何度も刑務所に入れられるがすぐに脱走し、とにかく手の付けられないアウトローなのである。こういう人間は本来、組織の面子を重んじる裏社会には決して馴染まないはずで、それが彼の”異物感”を成り立たせている。

 どうしてこんな男になってしまったのか?バックストーリーが一切語られていないので分からないが、逆にそれが石松という男をモンスター化しており、ある種狂人映画としては大変見応えのある作品になっている。

 石松の顛末を描くクライマックスシーンも印象的だった。虚空を見て笑みを浮かべるその先に彼は何を見たのか?どこか清々しさも覚える。しがらみや社会の常識から解き放たれた”喜び”のように感じられた。

 キャストでは他に智恵子を演じた有森也美の体を張った演技が印象に残った。石松をひたすら待ち続ける昭和的な女性像を切々と体現し、その悲壮さはかつてのトレンディドラマの女優というイメージを完全に払拭している。

 今作で一つだけ気になったのは、語り部についていである。石松の元舎弟・吉川のナレーションが時々入るのだが、これが余り効果的とは言えない。そもそも吉川の活躍自体、本編中には余りなく、ナレーションの意味があまりないように思った。
[ 2023/08/11 00:28 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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