「ファミリー☆ウォーズ」(2018日)
ジャンルコメディ・ジャンルアクション
(あらすじ) 福島家は亭主関白な父を中心に、祖父、母と4人の子供たちが仲睦まじく暮らしていた。ところが、祖父が認知症を発症したことから平和だった家庭は崩壊する。祖父がドライブ中に子供をひき殺して、一家はその死体を巡って奔走することになる。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 平和な一家が崩壊していく様をオフビートな笑いとシュールで過激なバイオレンス描写で綴ったブラック・コメディ。
作為性丸出しな朝の食卓風景から、見事なまでのうさん臭さだが、本作は全編このテイストが貫かれた怪作である。
物語は福島家の祖父の認知症をきっかけに殺伐とした雰囲気に切り替わるが、どこかコメディ寄りに味付けされているのが特徴的だ。
個々のキャラクターの濃さも特筆すべきで、福島家の長男は無職のギャンブル狂、次男はオナニー狂、長女は売れないアイドルをやっていて、次女は引きこもりのメンヘラ女子といった具合で、一見すると仲睦まじく見える家族も実はそれぞれに問題を抱えたバラバラな家族だったということが分かってくる。
また、猟銃を持って突然挨拶に訪れる隣人や、祖父に引き殺された子供の親と思しきヤンキー夫婦、祖父の認知症を直すために母親が連れてきた霊媒師サークル等、一癖も二癖もある連中が、この物語をより一層カオスにしている。
監督、脚本、撮影、編集は
「スロータージャップ」(2017日)、
「ハングマンズ・ノット」(2017日)を自主制作で取り上げた新鋭・阪元裕吾。本作は彼にとっての初の商業映画である。
これまでの作品同様、非常にエネルギッシュでぶっ飛んだ作品である。商業路線になっても、過激で露悪的な倫理観無視の描写に陰りはない。
ただ、結論から言うと、個人的には前2作に比べると今一つ乗れなかった。
確かに面白い設定で、石井聰亙監督の
「逆噴射家族」(1984日)のような社会批判性も感じられる所に作家としての新たな試みを感じるのだが、いかんせん肝心のギャグが今一つツボに入りきらず全てが空回りしてしいるという感じがした。
また、阪元作品の見所の一つであるバイオレンス描写も、今回はクライマックスに集中した作りになっており、そこに至るまでが少し退屈してしまう。
ラストのどんでん返しは良いと思うし、オチも人を食っていて面白いと思うのだが、今回は見せ場が少ないような気がした。
あくまで個人的な感想だが、阪元監督はこうしたコテコテなコメディよりも、切れ切れでぶっ飛んだバイオレンスを前面に出して作った方が似合っているような気がする。