市川崑監督が亡くなった。享年92歳。大往生だと思う。
ご冥福をお祈り致します。
改めて氏の作品を見てみると、とてもスタイリッシュな画を撮る監督だったんだなぁ‥と感心させられる。
今回は人気シリーズ「金田一耕助シリーズ」の第二段「悪魔の手毬唄」を紹介します。
「悪魔の手毬唄」(1977日)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 昭和27年、岡山県鬼首村。磯川警部は20年前に起きた殺人事件を今でも追っていた。---当時、村には仁礼家と由良家という二大勢力が存在していた。恩田という詐欺師が村に現れて仁礼家が台頭するようになると、由良家は失墜した。その直後、亀の湯の主人源次郎が殺される。恩田はその晩姿をくらました。---磯川は私立探偵金田一耕助に調査の助けを依頼する。来て早々、金田一は村外れに住む放庵という男に代筆を頼まれる。相手は別れた妻宛てだったが、なんとその妻はすでに他界していた。金田一がそれに気付いた時、放庵は謎の失踪を遂げる。時を同じくして由良家の娘泰子が他殺体で発見される。彼女は源次郎の息子歌名雄の婚約者だった。長年にわたる両家の愛憎が次第にあらわになってくる。
DMM.comでレンタルする映画生活goo映画

(レビュー) 「犬神家の一族」(1976日)に続いて製作された『金田一耕助シリーズ』第2段。
金田一初登場となる前作は彼のキャラクターの魅力を散りばめながら推理劇の醍醐味を味わえる作品だった。正直映像の創意自体に稚拙な部分もあったが、当時としてはかなり衝撃的なビジュアルフックを持っていたし、大々的なメディアによる興業戦略はそれまでの日本映画では画期的なものだった。本作は前作に比べるとインパクトという点ではやや劣るし、金田一の存在自体もやや薄みである。しかし、事件の背景に存在する複雑な人間模様に重点を置いたストーリーは、人間ドラマ的な深みが感じられる。
何といってもウェット感漂う幕引きが絶妙である。
過去に縛られながら生きる女主人リカ。彼女の心中を察すると、この結末は実に泣かせる。そして、彼女を見守るように20年間も捜査を続ける磯川警部も泣かせる。演じる若山富三郎が良い味を出している。
事件の真相は容易に想像出来るのだが、逆に想像できるからこそ二人のやり取りに味わいが出てくる。推理劇のエンタテインメント性よりも人間ドラマの趣を優先させた作りで、正直俺は前作よりもこちらの方が好きである。
ところで、このシリーズには必ずと言っていいほどファニーなキャラクターが登場して息抜き場面を演出するのだが、これが案外バカに出来ない。立花主任はその最たるものだが、もう一人本作には強烈なキャラクターが登場してくる。無愛想なかみさんがそれだ。このキャラは数秒しか登場しないのだが、ユーモラスで突出した印象を残す。