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走れ、絶望に追いつかれない速さで

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「走れ、絶望に追いつかれない速さで」(2015日)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 漣は1年前に自死した親友・薫のことを、いまだに受け入れることができずにいた。ある日、薫が描き遺した絵を見つける。そこには、中学時代の同級生の女の子が描かれていた。漣は彼女にその死を知らせなければと思い立ち、薫の恋人だった理沙子とともに彼の故郷へ向かうのだが…。

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(レビュー)
 親友の死から立ち直れずにいる青年の再生を繊細なタッチで描いた人間ドラマ。

 シンプルなドラマながら、非常に力強いメッセージを発している作品だと思う。時世を前後させた構成がドラマをミステリアスに見せており、セリフに極力頼らない語り口も物語に上手く抒情性を生んでいるように思った。

 ただ、情報が少ない分、どうしても漣の心理に迫る描写が不足しており、そこはもう一工夫欲しいという気がした。そもそも死んだ親友の初恋の女性に会うために遠路はるばる訪れるだろうか?電話やメールで知らせるのではなく、わざわざ直接会いに行く動機が今一つ映像からは伝わってこなかった。初恋の女性のリアクションもそうりゃそうだろうという感じで、漣の行動には正直、余り感情移入することはできなかった。

 とはいえ、本作は終盤の展開が見事で、そこだけでかなりの満足感がある。それまで過去に捕らわれ続けていた漣の”解放”への道程に清々しくい感動を覚えた。

 また、薫の自死の原因を明確に示唆しなかったのも、映画を観終わって様々な余韻を残し、このドラマを印象深いものとしている。
 薫は画家志望の青年で夢を追いかけて東京に出てきた。しかし、結局芽が出ないまま田舎に戻ることになる。理沙子との破局、夢の挫折等、様々なことが組み合わさっての自死だったと想像できる。しかし、漣はそれが信じられない…というよりも信じたくなかったのだろう。親友であれば相談してほしかった。彼を勇気づけられたかもしれない。そんな後悔が薫の死を受け入れることを拒んでいるように見えた。

 監督、脚本は「愛の小さな歴史」(2014日)の中川龍太郎。本作は氏の自伝的な内容を反映させた作品ということである。それを知ると、漣の悲しみにひとかたならぬ思いが込められているものと想像される。

 演出は先述したようにセリフや独白に頼らない手法をとっており、それが最後まで貫通されている。
 例えば、食事のシーンは本作にはよく出てくるが、これもよく計算されていると感心した。漣が職場の先輩と食堂で食べるシーンが前半と終盤で2度登場してくる。この二つから漣の心情変化は自然と読み取れ、ドラマも見事に帰結するに至っている。
 また、漣がすき焼きを黙々と食べる後半のシーンも印象深い。親友の死から徐々に立ち直っていく漣の心情変化が、食という行動の中だけで見事に表現されていると思った。

 キャストでは漣を演じた太賀(仲野太賀)の自然体な演技が良かった。将来の夢を見つけられないでいるモラトリアムな青年という役所を素直に演じていて好感が持てる。
[ 2023/04/08 00:53 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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