「四月の永い夢」(2018日)
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) そば屋でバイトしている元音楽教師の初海は、ある日、亡き恋人の母親から一通の手紙を受け取る。それは彼が初海に宛てた最後の手紙だった。やがて、そば屋の常連で染物工場で働く青年から初美は思いがけない告白をされ…。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 元恋人の死を引きずる女性の再生を、繊細な演出と、多彩な周縁人物を交えて描いた作品。
初海と死んだ恋人がどういった関係を辿り、どういう経緯で亡くなったのか?そのあたりは一切描かれていない。ただ、映画終盤で明かされる恋人の最後の手紙から、二人の破局の背景には、それなりの深刻な問題があったことは想像できる。初海は愛嬌の良いそば屋の看板娘として常に明るく振る舞っている。しかし、その裏側では他人に言えぬ、こうした悔恨の念をいつも抱えていたのか…と思うと切なくさせる。
監督、脚本は
「愛の小さな歴史」(2014日)、
「走れ、、絶望に追いつかれない速さで」(2015日)の中川龍太郎。「愛の小さな~」は大変ハードコアな作品だったが、それと比べると本作はまるで別人が撮ったような安らぎを覚える作風である。
但し、そのテイストが物語のヘビーさを相殺してしまい、全体的にチグハグな印象を受けた。
美しい映像と、静かでキャッチ―なメロディーの劇伴、そして初海を演じた朝倉あきの可憐さを追求した役作りは、本来ヘビーであって然るべき喪の仕事というテーマを全て打ち消してしまっている。
唯一、終盤の手紙のインサートは素晴らしいと思ったが、全体的には余り乗れない作品だった。
尚、セリフの中にはいくつか良いものも見つかる。亡き恋人の母親が言う「人生とは失うことの方が多い」という言葉は、ラストの初海の表情の”問いかけ”になっていたことが映画を観終わって反芻される。ラストの初海の表情は正にこの言葉の”答え”に思えた。