「血ぬられた墓標」(1960伊)
ジャンルホラー
(あらすじ) 17世紀、バルカン地方の王女アーサは魔女とみなされ火炙りの刑にされてしまう。200年後、医師のクルヴァヤンと助手ゴロベックは医学会に出席するために馬車を走らせていた。途中で車輪が外れて止む無く近くの古びた館に入る。そこには石棺に入った、今にも生き返りそうな美女が横たわっていた。
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(レビュー) 200年前に火刑に処された王女の復讐を、シャープなモノクロ映像で描いたホラー作品。
物語自体は、この手のジャンル映画でそれほど斬新というわけではないが、何と言ってもイタリアン・ホラーの元祖マリオ・パーヴァ監督の映像に対するこだわりが随所に感じられ、今観ても十分に楽しめる作品となっている。
パーヴァと言えば、元々はロベルト・ロッセリーニの短編等で撮影監督を務めていたこともあり、その映像センスは確かなものがある。特に、ここぞという場面における陰影を駆使した不気味なトーンは、いかにもゴシックホラー的な趣を感じさせ、もはや風格さえも感じさせる。
一方で、イタリア映画らしいい残酷描写も抜かりはなく、特にオープニングシーンは脳裏に焼き付くほどのインパクトで、その衝撃たるや凄まじい。棘がついた仮面をアーサの顔にかぶせて槌を打ちふるうという”えげつなさ”は、時代を超えて尚、今観ても目を背けたくなるほどのショッキングさである。
他にも、顔に無数の穴が空いたアーサの亡骸や、暖炉の火で体が溶けていく過程をねちっこく見せる演出、アーサに精気を吸い取られてみるみるうちに顔がしわだらけになっていく特殊効果等、見応えのあるシーンが随所に登場してくる。ある種露悪的なサービス精神はいかにもイタリアン・ホラーここにありといった感じで楽しめる。
ゴシック調で格調高さを伺わせるモノクロ映像と人体破壊のグロテスクな残酷シーン。この二つが1本の作品の中で見事に同居するという点において、本作は古びない作品となっている。
キャストでは、アーサと彼女の曾孫カティアを、一人二役で演じたバーバラ・スティールの存在感が印象に残った。バーバラは本作をきっかけに数多くのホラー作品に出演し、元祖スクリーミング・クイーンとしての地位を確立していった。そういう意味では、彼女にとっても本作はブレイクのきっかけとなった貴重な作品である。