「処刑男爵」(1972伊)
ジャンルホラー
(あらすじ) かつて蛮行の限りを尽くした残虐なクライスト男爵が眠る墓地に、彼の子孫ピーターがやって来る。男爵は魔女エリザベスの呪いによって封印されていたが、それをピーターが古紙に書いてあった呪文を唱えて蘇らせてしまう。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 300年前の亡霊が現代に蘇り次々と殺人を繰り返していくオカルトホラー。
元をただせば好奇心から男爵の霊を蘇らせたピーターが一番悪いということになり、物語自体に共感を覚えることはできなかった。
また、シナリオは前半のテンポの悪さが致命的で、盛り上がりに欠けるのが難点だ。クライマックスの男爵退治もあっけない仕掛けで、またその伏線の張り方も安易で落胆させられる。この物語のキーパーソンとなる少女グレッチェンの存在が今一つ理解しがたく、お化けを見たと言ったり、男爵の弱点を知っていたり、果たして何者だったのか?劇中ではそれについて何も触れられてらず、観終わってもモヤモヤしてしまった。
一方、映像については要所で惹かれるものがあった。このあたりは監督を務めたマリオ・パーヴァの面目躍如といった所だろう。古城の怪しい雰囲気は申し分ないし、森の中の霊気が漂うような不気味さも良い。魔女によって封印されたクライスト男爵の醜悪な容姿もインパクトがある。
パーヴァ作品の見所の一つ、残酷描写は今回は薄みである。ただ、針が敷き詰められた棺桶の中で男が串刺しになるシーンは中々のエグさで印象に残った。
キャストでは、ピーターと行動を共にするエヴァを演じたエルケ・ソマーのコケティッシュな魅力が、陰鬱とした作品に華を添えている。また、中盤から登場するアルフレッド・ベッカー役のジョセフ・コットンの悪役振りも見もので、こういう役が本当によく似合うと思った。