「NOPE/ノープ」(2022米)
ジャンルSF・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 映画やテレビのために馬の調教を行っていたヘイウッド家は、父の急死で経営の危機に陥ってしまう。後を継いだ息子のOJと娘エメラルドは、元子役のリッキーが経営するテーマパークに馬を売りに出した。そんなある夜、OJは上空に不思議な物体を目撃する。
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(レビュー) 空に浮かぶ不思議な物体に翻弄される兄妹の運命を予測不可能な展開で見せるSFサスペンス作品。
監督、脚本は
「ゲット・アウト」(2017米)、
「アス」(2019米)のジョーダン・ピール。
ナンセンス且つユニークな設定が、いかにもこの監督らしく、演出力も抜群に高い人なので今回も最後まで面白く観ることが出来た。
彼はテレビシリーズの新「トワイライト・ゾーン」の企画・製作総指揮も務めており、今回の物語はどちらかと言うとそれに近い印象を持った。
ただ、今回はこれまでの作品と比べて社会派的なメッセージがやや後退していると感じた。純粋にエンタメに振り切っており、そこに個人的には少々物足りなさを覚えた。
これが良いのか悪いのか分からないが、もはやハリウッドのヒットメーカーを担う存在となった以上、作家性よりも大衆が好むエンタメに傾倒していくのは無理からぬ話である。
作中に様々なオマージュが見つかるのも本作の楽しみの一つである。
例えば、大友克洋の「AKIRA」(1988日)、スピルバーグ監督の「未知との遭遇」(1977米)、ジョン・カーペンター監督の「ゼイリブ」(1988米)、更には「新世紀エヴァンゲリオン」などからの引用も見られる。
また、本作は映画の原初に対するピール監督の敬愛も感じさせる作品で、それは冒頭の”動く馬”の連続写真からもよく分かる。これは実在した写真家エドワード・マイブリッジによる世界初の動く映像であり、ある意味ではリュミエール兄弟に先駆けて発表された”活動写真”とみなすことが出来る代物である。
実は、これが本作における重要なモティーフとなっており、頭上に浮かぶ得体のしれない”何か”をカメラに収めようとするOJとエメラルド兄妹の奔走を描く本ドラマのキーワードにもなっている。
余り情報を入れないで観た方が楽しめる作品だと思うので、これ以上のネタバレはしないが、そうした作品に忍ばされたメッセージを受け取りながら観ると本作は更に味わい深く鑑賞できる。
尚、本作はIMAXカメラを使って撮影された作品である。撮影監督はホイテ・ヴァン・ホイテマ。彼はクリストファー・ノーラン監督とよく組んでおり、
「インターステラー」(2014米)や
「ダンケルク」(2017米)、
「TENET テネット」(2020米)でもIMAX撮影を行った名手である。一説によると本作では約4割がIMAXで撮影されたと言われている。特に、ロケーション撮影における迫力はIMAXならでは効果が十分に発揮されていて、これはぜひとも映画館で観てみたかった。今回は配信での鑑賞になってしまったことが惜しまれる。