「アウステルリッツ」(2016独)
ジャンルドキュメンタリー
(あらすじ) 第二次世界大戦中に多くのユダヤ人が虐殺されたザクセンハウゼン強制収容所。そこを訪れる観光客の様子を記録したドキュメンタリー。
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(レビュー) 自分は知らなかったのだが、ベルリン郊外にあるこの元強制収容所は、戦争の歴史的遺産として多くの観光客が訪れる場所になっているということだ。
注意したいのは、本作はアラン・レネ監督の
「夜と霧」(1955仏)のように過去の歴史についての作品ではないという点だ。本作はガイドに連れられた旅行者がぞろぞろと歩く光景が延々と映し出されるだけで、そこで行われた虐殺についてのドキュメンタリーではない。
本作のユニークな所は正にここで、過去に凄惨な行為が行われた場所を前にして人は如何なる反応を見せるのか?それをつぶさに観察したという点にあるように思う。
ガイドの説明に耳を傾け険しい表情を浮かべる者。カジュアルに笑みを交えながら家族と記念撮影をする者。自撮りをしてSNSに投稿する者。人々の反応は様々で、それをカメラは淡々と切り取っている。
これを見て不謹慎と思う人もいるかもしれない。しかし、果たして自分だったらどうだろう?ということを考えさせられてしまう。少なくとも笑いながら記念撮影を撮ったりはしないと思うが、珍しくて歴史的価値がある場所だからといことであちこち写真は撮りそうである。
監督は
「国葬」(2015オランダリトアニア)のセルゲイ・ロズニッツァ。
「国葬」もそうだったが、ナレーションやBGMを一切入れず淡々と記録映像を積み上げていく手法がここでも採られている。観る側の感情を誘導するのではなく、あくまで自主的に感じ取って欲しいという狙いが感じられた。見ようによっては抑揚にかける作品かもしれない。しかし、個人的には極めてフラットな創作姿勢に好感が持てた。