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カルロス

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「カルロス」(2010仏独)star4.gif
ジャンルサスペンス・ジャンル社会派・ジャンルアクション
(あらすじ)
 1973年、カルロスはパレスチナ解放人民戦線(PFLP)のリーダー、ワディ・ハダドに面会する。日本赤軍のフランス大使館襲撃やオルリー空港でのイスラエル機砲撃などに関与し、次々と成果を上げていった彼は組織でのし上がっていく。ところが1975年、ウィーンのOPEC本部を襲撃した際、彼は人質解放の交渉に失敗して窮地に追い込まれてしまう。

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(レビュー)
 1970年代に数々のテロに関与した伝説のテロリスト、イリッチ・ラミレス・サンチェス。コードネーム、カルロスの半生を描いた伝記映画。

 元々はフランスのテレビシリーズで製作された作品だが、評判を呼び各国で劇場公開された作品である。全5時間半に及ぶ三部構成の大作である。

 監督、脚本は「クリーン」(2004仏英カナダ)「夏時間の庭」(2008仏)、「イルマ・ヴェップ」(1996仏)のオリヴィエ・アサイヤス。ベテラン監督らしいきびきびとした演出が行き届いた快作となっている。TVムービーということを考えれば、おそらく予算もそれほど多くはないだろうが、演者の力演、ドキュメンタルなカメラワークが画面に緊迫感とスピード感、熱度をもたらしている。時間は長いが、まったく飽きなく最後まで面白く観ることが出来た。

 日本の連合赤軍やドイツの革命細胞、バグダッドの新派、警察や政府関係者等、登場人物はかなり多いが、カルロスの視座がしっかりと固定されており、複雑な事件の背景を極力省いているのが観やすさに繋がっている。このあたりの構成力は実に手練れていて、時折ニュースフィルムを挿入する小技も真実味を持たせるという意味では上手いやり方に思えた。

 物語は軽快に展開されていく。パレスチナ解放人民戦線に参加し、数々のテロ活動をしていきながら組織で頭角を現していく第1部を皮切りに、ウィーンで行われているOPEC本部を襲撃する第2部。そして、フランス、イギリス、オーストリア、イエメン等でテロ活動に参加しながら逃亡者となる第3部。

 但し、本作は一応実話をベースに敷いているが、実際にはどこまで史実に忠実かは分からないということだ。本作はあくまでフィクションを謳っており、脚色が多分に入っているらしい。逆に言うと、この割り切りが、作品を良い意味でエンタメに振り切らせている。

 革命の野望に撃ち敗れるカルロスの姿も、本来であれば重厚さを前面に出してもおかしくないのだが、軽快な演出と切れのあるアクションが軽く見せてしまった印象だ。

 BGMもロック系が多く、このあたりの選曲センスはアサイヤスならではといった所か。流麗な編集と合わせて、どことなくスコセッシの作品のような味付けになっているあたりが興味深い。

 キャストではカルロスを演じたエドガー・ラミレスの熱演が素晴らしかった。
 躊躇なく犯行を実行に移す大胆不敵なアウトローとしての顔、周囲の誰もが一目置くカリスマ性は、第2部後半から徐々に陰りが見え始め、PFLPを追放されて以降はもはや憐れな逃亡者になり果てていく。クールでマッチョな佇まいは、だらしなく太った中年男に変わり果て、同一人物とは思えぬ役作りに挑んでいる。
[ 2023/04/25 00:14 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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