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グレース・オブ・ゴッド 告発の時

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「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」(2019仏)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンル社会派
(あらすじ)
 妻子に囲まれ幸せな日々を送るアレクサンドルは、幼少時にプレナ神父から受けた性的虐待の記憶を今でも拭いきれずにいた。プレナ神父が今でも平然と子供たちに聖書を教えていることを知った彼は、過去の被害を告発する決意をするのだが…。

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(レビュー)
 フランス中を震撼させた“プレナ神父事件”を描いた実話の映画化。

 こういう問題は非常に難しい。断罪すれば済むというものでもなく、被害にあった当事者は一生そのトラウマを抱えながら生きていけねばならないからだ。主人公アレクサンドルは、多くの被害者が口をつぐみ過去の記憶から逃れようとする中、ただ一人プレナ神父を訴える。世間体や名声、家族のことを考えれば、中々できることではない。実に勇敢な男だと思った。

 ところが、プレナ神父当人は罪を認め謝罪するも、教会側は彼を辞職させないどころか匿い続けるのである。組織的な隠ぺいである。これに腹を立てたアレクサンドルは、世間に事件の全容を知らしめるべく告発を決意する。つまりこれは個人的な戦いではなく、腐敗した教会組織を相手取った改革のための戦いなのである。

 彼と同じような目にあった被害者は数多くいて、もはや常習的に性的虐待が行われていたことが分かってくる。本作はアレクサンドル以外に複数の被害者が登場して、彼らの戦う姿勢、夫々に抱える事情なども描いている。

 例えば、被害者の一人フランソワはマスコミを通じて事件を公表しようとする。そして、ネットを通じて被害者の会を結成する。
 報道でそれを知った、やはり被害者であるエマニュエルは、重たい口を開きフランソワたちの行動に参加する。弁護士を交えてプレナ神父と対面することになるが、このシーンは本作で最も印象に残るシーンだった。アレクサンドル同様、神父の口から謝罪の言葉が出るが、エマニュエルは決して赦さないと吐露する。この事件の重さが改めて実感される。

 監督、脚本はフランソワ・オゾン。氏にしては珍しい社会派的な作品であるが、おそらく彼自身、この事件に相当の関心を持ったのだろう。作家としての使命感が、本作を撮らせたのかもしれない。

 事件そのものをジャーナリスティックに捉えた一方、告発者が抱えるプライベートな問題に照射したあたりは流石にオゾンらしいと感じた。キャラクター造形や交友関係等、一体どこまで真実に沿って描かれているのか分からないが、単調になりがちなこの手の告発ドラマに上手く緩急が付けられている。
 プライベートを犠牲にして訴訟の準備に勤しむアレクサンドルたちは、妻や親、家族から理解を得られず、時に家庭の中で孤立してしまう。その葛藤をつぶさに捉えたあたりに人間ドラマとしての見応えを感じた。

 それにしても、ラストで裁判の結果が提示されるが、これをどう捉えるべきか。映画を観終えて自分は少し戸惑いを覚えた。詳細は伏せるが、果たしてこれは事件の解決と言えるのかどうか。今回の事件が明るみにされたことは大いに意義のあることだと思うが、教会という巨大組織の改革はまだまだこれからなのかもしれない。
[ 2023/04/28 00:42 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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