「僕が飛びはねる理由」(2020英)
ジャンルドキュメンタリー
(あらすじ) 世界各地の5人の自閉症の少年少女とその家族たちの取材を重ねながら、自閉症の人々が見ている世界を美しい映像とともに描き出したドキュメンタリー。
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(レビュー) 自身も自閉症である東田直樹が13歳の時に執筆したエッセイを元にして製作されたイギリスのドキュメンタリー。「クラウド アトラス」(2012米)などで知られるイギリス人の作家デイヴィッド・ミッチェルによって原作は翻訳され、これが世界的なベストセラーになったということである。
登場するのは、インド、イギリス、カナダ、シオラレオネの自閉症の子供たちである。自分の内面を上手く言葉で表現できない子供たちばかりだが、夫々に秀でた才能を持っていて、ある者は絵画の才能に溢れていたり、ある者は記憶力が人並外れていたりする。彼らを見ると、ひょっとすると普通の人よりも感受性が強く繊細な人間が多いのではないか…という気がした。
中でも印象的だったのは、文字盤を通して会話をする自閉症の男女だった。この方がコミュニケーションがスムーズに行くというのである。どういう論理でこの手法が成功しているのか、そのあたりは映画の中では余り詳しく紹介されていなかったのだが、この試行は大変興味深く観れた。
但し、映画を観終わって他の方の感想を読んで知ったのだが、この文字盤を使ったコミュニケーション、ファシリテイテッド・コミュニケーションは科学的に否定されている文献もあるということである。詳細は
wikiにも書かれているので、興味のある方はお読みいただきたい。したがって、このエピソードをどこまで信用して観たらいいのかよく分からないというのが正直なところである。
映画は夫々の子供たちを紹介しながら、時折、原作のエッセイをバックに日系人少年のイメージショットが挿入される。この少年は、本作にも登場するデイヴィッド・ミッチェルの自閉症の息子ということだ。
この演出が作品に幾分和らかい印象を与えていて、どこか救われる感じがした。美しい自然の中で自由気ままに飛び跳ねる少年の姿に無限の可能性、明るい未来を見てしまいたくなる。
自閉症、発達障害についてはまだ十分に世間に認知されているとは言い難い状況にあると思う。本作を観て少しでも理解が深まればいいなと思う。