「三姉妹 雲南の子」(2012香港仏)
ジャンルドキュメンタリー
(あらすじ) 中国で最も貧しい地域といわれる雲南省の村に住む幼い三姉妹を描いたドキュメンタリー。
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(レビュー) 母親が疾走し父親が出稼ぎで家を留守にする中、10歳のインイン、6歳のチェンチェン、4歳のフェンフェンの三姉妹の日常生活が淡々と映し出されるドキュメンタリーである。幼い彼女たちが精いっぱい生きる姿を見ていると、自分などは恵まれた環境で育った方だと自覚してしまう。
昨今、中国は都市部と農村部の経済格差が顕著になっており、インインたちが住む村も実に貧しい暮らしを強いられている。そんな劣悪な環境にめげずに三姉妹は力を合わせて、時に喧嘩をしながら一緒に暮らしている。生命賛歌的な趣を感じるとともに、経済格差という問題も実感される。
監督は
「無言歌」(2010香港仏ベルギー)、
「収容病棟」(2013香港仏日)のワン・ビン。
三姉妹の暮らしぶりを文字通り”観察する”スタイルで淡々と切り取っている。彼女たちにカメラの存在をまったく意識させないあたりは、羽仁進監督の
「教室の子供たち」(1954日)、
「絵を描く子供たち」(1956日)を彷彿とさせるナチュラルさで、ドキュメンタリーであることを忘れさせるような不思議な味わいが感じられる。
夫々のキャラクターも明確に伝わってきた。しっかり者のインインは不在の両親に変わって家事全般をこなす面倒見のいいお姉さん。次女のチェンチェンはそれを手伝いながら時折フェンフェンをからかっていじめる、まだあどけなさを残したおてんば娘。三女フェンフェンは、ひたすら無邪気な天使のように存在している。
そんな彼女たちの暮らしぶりは、貧困と孤独の戦いだ。祖父や叔母といった親戚が近くに住んでいるので、万が一何かあった場合は彼らに頼ることはできるが、それでも幼い子供たちだけの生活は不自由極まりない。したがって、こちらとしてはほとんど保護者目線で本作を観てしまった。
映画は中盤でようやく三姉妹の父親が登場してくる。出稼ぎから帰ってきた父親と久しぶりの一家団欒を過ごす三姉妹。そこで見せる明るい表情はとても印象的だった。いつも険しい表情をしていたインインなどは年相応の子供らしい笑みを浮かべ、何だかホッと安堵させられたりもした。
本作はロケーションも大きな見どころである。雄大な高原がちっぽけな三姉妹の暮らしぶりとの対比で、ことさら過酷に見える。寒い時期は霧がかかり、夏になれば虫や湿気で不快指数が高そうである。
個人的に印象に残ったのは後半、インインが近所の友達と喧嘩になり孤立してしまうシーンだった。ただでさえ孤独な彼女にとって、この一件はどれほど心に深い傷を残しただろう。狭い村社会では密なる人間関係が築かれているが、そんな中でトラブルを起こしてしまうとどうなるのか?疎外され居場所がなくなってしまう。こういうのを見ると、かえって都会の方が、人間関係は空疎な分、暮らしやすいのかな…という気がしなくもない。このあたりにも都会と地方の差が実感される。