「サン・ラーのスペース・イン・ザ・プレイス」(1974米)
ジャンルSF・ジャンルコメディ・ジャンル音楽
(あらすじ) 土星から宇宙音楽王サン・ラーが地球にやって来る。彼は平和な惑星に黒人たちを移送する壮大な計画を実行すると宣言した。一方、NASAはその神秘的な技術を狙って彼の居場所を突き止めようとするのだが…。
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(レビュー) フリージャズを中心に活動した音楽家サン・ラーが自ら主演、脚本、音楽を務めて製作したSF作品。
自分はサン・ラーについてまったくの無知で本作を鑑賞した。正直、映画としての出来は余り芳しいものではない。チープな演出と脈絡なく展開される物語に途中で退屈してしまった。
一番意味不明だったのは、1943年のクラブでサン・ラー扮するピアニストと客がカードゲームをするのだが、それが時空を超えて1970年代の物語とリンクする所である。こうしたシュールレアリスム的な作りは決して嫌いではないのだが、どうにも決まりきった展開のオンパレードでアイディア不足に感じられてしまった。
ただ、ブラックスプロイテーション映画として観ればテーマ自体には溜飲が下がるし、サン・ラーが演奏するフリー・スタイルな音楽も独特な魅力で面白かった。
また、映画を観終わってサン・ラーについて興味が出たので調べてみたが、この音楽家がいかに時代を先取りしたアーティストだったかが分かり、本作に対する見方も変わってくる。
センセーショナルなキャラクターを演じることで独自の世界観を築き上げたところは、後のデヴィッド・ボウイのジギー・スターダストを連想させる。しかし、デヴィッド・ボウイと違うのは、彼はこのキャラを音楽活動の中で一貫させたことである。商業的な狙いではなく、一人のアーティストとして最後までキャラクターを”演じきった”ことは凄いことではないだろうか。こうした彼の音楽的な功績や特異な人生を知っている人が見れば、本作の評価はまた変わってくるのかもしれない。
個人的には、彼自身を描いたドキュメンタリーを観てみたい気がした。