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スピリッツ・オブ・ジ・エア

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「スピリッツ・オブ・ジ・エア」(1988豪)star4.gif
ジャンルSF・ジャンルコメディ・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 果てしなく広がる荒野に佇む1軒の小屋。そこにフェリックスとベティの兄妹は暮らしていた。足の不自由なフェリックスは空を飛ぶ夢に取り憑かれていた。妹のベティは偏執的な気質で、父の遺言を守りながら頑なにこの土地から離れようとしなかった。そこにスミスという放浪者が流れ着く。

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(レビュー)
 オープニングの広大な荒野、どこまでも続く青い空、点々と立ち並ぶシュールなオブジェと巨大な十字架、ベティが奏でる哀しい旋律の音楽。もうこの時点で本作の世界観に一気に引き込まれた。同じオーストラリア産の近未来SF映画ということで言えば、「マッドマックス」シリーズに似た世界観も連想してしまうが、こちらは随分と朴訥としたテイストが横溢する。砂埃にまみれた西部劇のようなノスタルジックな風情も感じられた。

 物語はシンプルで、フェリックスとベティの兄妹の元に謎めいた青年スミスが転がり込んでくることで展開される。彼が来たことで、それまで平穏だった兄妹の日常が徐々に変化していく…という所がミソで、登場人物がほぼ3人というミニマルな設定も奏功し、彼らのパワーバランスがスリリングに見れて面白かった。

 例えば、スミスは空を飛びたいというフェリックスのために人力飛行機を一緒に作ることにする。ところが、ベティは父の教えを守り、この土地に居座ることを頑なに守っていることから、それに猛烈に反対する。
 放浪する男、この土地から出たい足の不自由な兄、この土地に引きこもる偏執狂な妹。その対立と融和には、夫々の切なる想いが想像され哀しみを覚えてしまった。

 時代設定や夫々のバックボーンについては余り説明されておらず、観ている方が色々と想像しなければならない。そういう意味では、観客に不親切な作品なのかもしれない。しかし、その余白を読むのも映画の一つの楽しみ方だ。一から十まで全て説明されたら、それはそれで味気なくなるわけで、本作はそのあたりの情報の提示の仕方が非常に絶妙である。すべてを差し出さないことによって解釈の幅は広くなり、どこか寓話的なテイストも漂う。

 製作、監督、脚本はこれが長編デビュー作となるアレックス・プロヤス。後に「ダークシティ」(1998米)や「クロウ/飛翔伝説」(1994米)等でスタイリッシュな世界観を見せつける鬼才であるが、その才覚はすでに今作からも伺える。カラーリングは全く異なるかもしれないが、唯一無二の超然とした世界観は他にはない魅力だろう。

 また、インディペンデント作品だけあって演出もかなり攻めたものが多く見られる。特に、陶酔的で哀愁漂う映像と音楽の掛け合わせは抜群で、この独特な世界観にドップリと浸ることが出来た。

 音響効果にもこだわりを感じる。車椅子の車輪の音、風車が回る音、金属がきしむ音がどこからともなく聞こえてきて、劇中では無音になるシーンが全くない。このノイジーな感覚は、兄妹の精神の不安定さを表しているのだろう。

 スタッフやキャストは新人が多く、以後のフィルモグラフィーでもそれほどキャリアを積み重ねている人はいない。
 ただ、ベティを演じた女優さんはかなりインパクトのある演技を披露しており、本作で最も印象に残った。シーンごとにメイクや衣装を変え、一つとして同じ表情を見せない役作りは見事と言うほかない。
[ 2023/07/01 00:14 ] ジャンルコメディ | TB(0) | CM(0)

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