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ポゼッサー

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「ポゼッサー」(2020英カナダ)star4.gif
ジャンルサスペンス・ジャンルSF
(あらすじ)
 愛する家族と暮らす平凡な主婦タシャは、実は殺人を請け負う企業で働くベテラン暗殺者だった。彼女は特殊な装置でターゲットの身近な人間の脳内に入り込み、意識をコントロールして暗殺を繰り返していたのだ。しかし、他人の意識に入り込みすぎるあまり自らのアイデンティティに混乱をきたしていくようになる。

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(レビュー)
 他人の意識の中に入り込んで暗殺を実行するというSFガジェットが面白い。この手の設定は決して斬新というわけではないが、今回は平凡な主婦が主役ということで、そこに新味を覚えた。

 彼女タシャは、表向きは平凡な主婦であるが、裏では冷酷な暗殺者であり、家族にもそのことは内緒にしている(あるいは夫だけは知っていたかもしれないが)。このギャップがドラマを面白く見せている。

 暗殺の方法も捻りが加えられていて面白い。
 タシャはターゲットの身近な人間の意識に潜り込んで暗殺を実行するのだが、その際、証拠を残さないために、最後は自殺をして完了するのだ。そうすることによってタシャの意識は自分の肉体に戻れるようになる。
 しかし、いくら他人の身体とはいえ、自殺をするのは決して気分が良いものではない。タシャはどうしてもそれが出来ず、ある日とうとう彼女は自分の身体に戻れなくなってしまうのだ。

 ここで気になるのは、本当に怖いという理由だけで自殺が出来なかったのか?という点である。

 主婦という”現実”と暗殺者という”非現実”。この二つに引き裂かれる彼女の葛藤は実に面白く読み解ける。これは想像だが、彼女は暗殺を実行するために他人の身体に入り込むうちに、様々な”自分”になる喜びに目覚めたのではないだろうか。今の主婦ではない自分。別な人生に対する夢想と欲望が、彼女の意識を他者にとどまらせたのではないか…ということである。

 例えば、巨大企業のCEOを暗殺するエピソードが出てくる。彼女はCEOの娘婿の脳内入りこむのだが、そこで男の肉体を通してセックスを体験し今までに感じたことのない新鮮な快楽を得る。

 自分ではない誰かの人生を追体験できるバーチャル・リアリティの世界と同じで、性別や年齢といった壁を越えて、別の自分になれるという快感。それに溺れてしまったために、彼女は自殺できなくなってしまったのではないか…と想像できる。

 ちなみに、タシャは時々、家族を殺害するフラッシュバックを見る。これも、彼女の現実逃避の表れなのかもしれない。

 こう考えると、この物語は日常からの解放に魅せられた一人の女性の葛藤を描いたドラマ…と言えなくもない。

 監督、脚本はブランドン・クローネンバーグ。かのデビッド・クローネバーグの息子である。長編デビュー作「アンチヴァイラル」(2012米)からして、父親譲りの独特の世界観が横溢し魅了されたが、本作で更にそのセンスに磨きがかかったような感じがする。

 空虚で無機質なトーンは前作から継続されており、バイオレンスシーンにおける毒々しいタッチも健在である。

 ただし、全体的にフラッシュバックが多用され過ぎている感じがした。観る方としては、そのたびに注意が削がれてしまうので、このあたりはもう少し抑制しても良かったように思う。
[ 2023/07/14 00:10 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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