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地獄の警備員

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「地獄の警備員」(1992日)星3
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 元学芸員の秋子は、バブル期で急成長中の商社に就職し、絵画取引部門で働き始める。時を同じくして、警備室に新人の富士丸が着任する。実は彼は過去に殺人を犯しながらも精神鑑定で無罪になった凶悪犯だった。

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(レビュー)
 静かなオフィスタワーを舞台にしたスラッシャー映画。

 ヒロイン秋子が就職するのが商社の絵画取引部門というあたりがいかにもバブル時代の名残を残していて、どこか懐かしさを覚えながら観た。好景気に沸いた当時の人々は誰もが浮かれており、そんなある種の”軽薄さ”が本作にも貫かれている。このテイストが良い意味で作品にB級テイストをもたらしていると思った。気軽に観れる作品である。

 監督、脚本は黒沢清。本作はディレクターズ・カンパニー(以下「ディレカン」)末期の作品である。ディレカンは当時のメインストリームとは一線を画したインディーズ映画製作会社で、「太陽を盗んだ男」(1979日)や「青春の殺人者」(1976日)の長谷川和彦を筆頭に、石井聰亙、井筒和幸、高橋伴明、大森一樹等の若い才能が集結したプロダクションだった。その中に本作の黒沢清もいた。今や日本映画界を代表する一人となった氏の創作活動はここから始まったと言っても過言ではなく、一般映画デビュー作「ドレミファ娘の血が騒ぐ」(1985日)もディレカン製作の作品である。

 映画の出来はスラッシャー映画然とした作りで潔い。話のテンポもよく、最後のオチまで上手くまとまっていると思った。

 流血シーンもあるにはあるが、派手に見せるわけではなく、全体的にマイルドに味付けされているので余り嫌味も感じない。
 例えば、富士丸が秋子の同僚をロッカーに閉じ込めて殺害するシーンは中々ユニークである。元力士らしくロッカーに体当たりをしてペシャンコに押しつぶして殺すのだ。おそらく中の被害者は全身の骨が砕けて悲惨な姿になっているだろうが、それを敢えて見せず、ロッカーから大量の血が流れ出すという演出で表現している。

 他にも、死体を発見した者のリアクションで凄惨さを表現するなど、いわゆる見世物映画的な演出をしていない所に好感が持てた。

 もちろん低予算映画なので表現に限界があるということなのだろうが、同じディレカン作品でもこれ見よがしなスプラッター映画となった高橋伴明監督作「DOOR」(1988日)とは明らかに演出の系統が異なる所が興味深い。

 他に、黒沢清らしいと言えば、”闇”に対する執着も挙げられる。次作「CURE」(1997日)で、それが突き詰められるが、その片鱗が垣間見れた。

 例えば、薄暗い資料室のドアや非常階段、富士丸が潜む地下室の異様さはプロダクションデザインの仕事ぶりも奏功し独特な不気味さが感じられた。給湯室の透明なカーテンも映像演出を活かすという意味では上手い仕掛けのように思う。

 キャストでは、本作で映画デビューとなる松重豊が富士丸役を怪演している。彼は結構長身なのだが、本作ではことさらそれが強調されている。映像演出の妙である。
 他に、秋子の上司役を演じた大杉連の軽妙さは陰鬱なトーンを和らげるという意味では好演と言って良いと思う。
 逆に残念だったのは、秋子を演じた女優の演技が今一つだったことである。周囲の芸達者な顔ぶれに囲まれると演技のクオリティが明らかに違って見えてしまう。

 尚、監督助手として故・青山真治が参加している。
[ 2023/08/06 00:57 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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