fc2ブログ










その手に触れるまで

pict2_296.jpg
「その手に触れるまで」(2019ベルギー仏)star4.gif
ジャンルサスペンス・ジャンル社会派・ジャンル青春ドラマ
(あらすじ)
 13歳の少年アメッドは近所の小さなモスクに通ううちに、いつの間にか導師の過激思想に染まっていった。やがて、握手を求めてきた女性教師イネスを背教者と決めつけ、彼女の殺害を計画するのだが…。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 イスラム教の過激な思想に染まっていく少年の心の闇をスリリングに描写した青春クライムムービー。

 アメッドが何故そこまでイスラム教にのめり込んでしまったのか?そのあたりの経緯がバッサリと省略してしまっているが、そこはそれ。後述するが、彼のバックストーリーを察することで、色々と想像できることが多い。

 ちなみに、個人的には本作を観てオウム真理教を連想した。こうしたカルトが世に蔓延するのは、未来を絶望視する人間の弱い心に原因があるように思う。もちろん最大の問題はそこに付け込むカルトにあるわけだが、ネガティヴ思考を誘発する社会にも原因はあると思う。

 共同製作、監督、脚本はジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟。手持ちカメラによるドキュメンタリータッチがシーンに異様な緊張感をもたらし、今回も画面から目が離せなかった。

 とりわけ、中盤で少年院に入ったアメッドがイネスと面会するシーンは、いつ再び凶行に及ぶかというスリリングさに引き込まれた。

 90分弱というコンパクトさも良い。ダルデンヌ作品はヘビーな題材のわりに割と観やすいのだが、その最大の要因はコンパクトなランタイムにあるように思う。今回は得意のロングテイクはそこまで多用されておらず、よく見ると編集でかなり切り詰められているように見えた。こうした編集のおかげで本作はかなりコンパクトにまとめられている。

 例えば、アメッドが少年院に入るまでのクダリはバッサリとカットされてしまっている。本来であれば重要な場面なので描いても良いと思うのだが、敢えてそこを省略してしまっている。したがって、観ているこちらとしては一瞬戸惑ってしまうのだが、しかしこのような大胆な省略が結果的に物語の意外性と展開の流麗さに繋がっている。

 下手な監督がこれをすれば鑑賞感が薄っぺらいものになってしまうのだが、ダルデンヌ兄弟はやはり一味違う。シーンの取捨選択が絶妙で観終わっても決して軽さを感じない。最終的にズシリとした重みが感じられるのだ。

 それにしても、アメッドが置かれている状況を考えると恐ろしくもあり、どこか切なくもある。彼は家庭にも学校にも居場所がなく常に孤独を抱えていた。少年少女の”孤独”はダルデンヌ作品では何度も描かれてきたテーマである。「少年と自転車」(2011ベルギー伊仏)、「ロゼッタ」(1999ベルギー仏)、「ある子供」(2005ベルギー仏)、「息子のまなざし」(2002ベルギー仏)等。彼らは常に孤独で鬱屈した感情を抱えている。今回の「その手に触れるまで」も然り。アメッドは自分を理解してくれる親も、友と呼べるような仲間もおらず、宗教にしか居場所を見いだせなかったのだろう。

 映画は中盤から、アメッドの社会復帰を描くドラマになっていく。彼は収容所のプログラムで農場で働くことになるのだが、ここで同じ年頃の少女ルイーズと出会い、ぎこちないながらも交流していくようになる。このルイーズというキャラクターは本ドラマのキーパーソンで、非常に重要な役回りを担っている。

 ウェルメイドなドラマであれば、ここで淡いロマンスへと発展し、アメッドの改心、成長を描くのであろうが、そこもダルデンヌ兄弟は一味違う。彼女との出会いが救いとなるどころか、更なる悲劇の呼び水となってしまうあたりが何ともシビアである。
 但し、映画はその後に一筋の光明を見出して締めくくられている。これがあることで自分は大分救われた。ただの胸糞映画だけで終わっていないあたりは流石にダルデンヌである。
[ 2024/01/04 00:19 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/2264-c95b4155