fc2ブログ










トゥインクル・トゥインクル・キラーカーン

pict2_301.jpg
「トゥインクル・トゥインクル・キラーカーン」(1980米)hoshi2.gif
ジャンル戦争・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 ベトナム戦争の真っただ中。古びた古城に精神科医のケーン大佐がやって来る。そこは兵役を逃れるための詐病を鑑定する軍の施設で、様々な患者が収監されていた。ケーン大佐はそこでロケットの発射直前に発狂したアポロの宇宙飛行士カットショーを始め、様々な患者達と奇妙な交流を始めていく。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 霧に包まれた古城を舞台に繰り広げられるシュールでブラックな寓話。

 「エクソシスト」(1973米)の原作者として知られるウィリアム・ピーター・ブラッティが自らの原作を製作、監督、脚本を兼ねて撮り上げた作品。一部でカルト視されているだけあって、何ともシュールでナンセンスな怪作である。

 例えば、巨大な月が地上に迫り来るカットショーのシュールな悪夢を筆頭に、自分をシェイクスピアやスーパーマンだと思い込む者、ナチスの軍服を着てハイテンションな挙動をする者、突然奇声を発する者等。そうした患者たちとケーン大佐の間で行われ意味不明なやり取りを中心に物語は展開されていく。

 一方のケーン大佐もどこか精神的に壊れた人間である。患者たちの奇行やぶしつけな態度を受け流しながら、何を考えているのかサッパリ分からないという有様なのだ。

 何を言われても無表情のケーン大佐。奇行に走る患者たち。両者のかみ合わない会話を延々と見せられるので、感情移入しようにも出来ず、結局最後まで翻弄されっぱなしだった。

 また、ドラマらしいドラマも余りなく、中盤まではストーリー的な動きも乏しい。シュールなコント集として観ればそれなりに楽しめるのだろうが、自分にはその笑いも今一つ感性にヒットしなかった。

 尚、本作を観て思い出されたのが「まぼろしの市街戦」(1967仏英)である。この作品は、精神病患者だけが取り残された村を舞台にしたシュールな反戦映画で、これまたカルト的な人気を誇る怪作である。

 確かに本作も一応、反戦メッセージは通底しており、そういう意味では共通する要素は見て取れる。戦場によるショックで精神を病んだカットショー達を見ているとどこか憐れさを覚えた。

 ただ、本作はベトナム戦争という背景はそれほど大きな意味を持っておらず、代わりに人間の孤独や尊厳、神の存在といった哲学的なテーマを前面に出した作りになっている。反戦ド直球だった「まぼろしの市街戦」より捻った構成で、より多義的なメッセージを孕んだ問題作に思えた。

 映画はクライマックスに差し掛かるあたりから、ケーン大佐とカットショーの友情に焦点が当てられていくようになる。そして、かなり唐突ではあるが、ラストは意外にも抒情的に締め括られている。二人の関係を”逆転”させた所に面白さを感じた。

 尚、邦題ではキラー・カーンとなっているが正しくはキラー・ケーンであろう。キラー・カーンだと当時活躍していたプロレスラーの名前になってしまう。
[ 2023/11/19 00:27 ] ジャンル戦争 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/2271-8c3837b1