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Have a Nice Day

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「Have a Nice Day」(2017中国)星3
ジャンルアニメ・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 ある夜、運転手のチャンは恋人の整形手術の費用のために組織の金を盗んだ。組織が差し向けた殺し屋に追われながらチャンは恋人の元へ走るのだが…。

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(レビュー)
 闇組織の金を巡る奔走劇を独特のタッチで描いたアニメーション作品。

 アニメーションとしてのクオリティは決して高いとは言い難いが、スリリングに展開されるストーリー、時折繰り出されるブラックユーモアが中々面白く最後まで飽きなく観れた。複雑に入り組んだ人間模様を夫々の視点で紐解くストーリーテリングの上手さも光る。

 登場してくるのは、組織の金を強奪した運転手のチャン、組織のボスと子分と殺し屋、チャンが立ち寄った食堂を経営する中年夫婦、チャンの母親、チャンの叔母とその恋人等である。大金を巡って彼らの醜悪で無為な争いが描かれていくのだが、面白いのはそもそもの元凶であるチャンの恋人の姿が一切画面に登場して来ないことである。正確にはエンドクレジットでそれらしき姿は見れるのだが、ドラマ的にはほぼ不在と言って良い。

 したがって、この騒動もどこか空しく、滑稽ものに見えてくる。更に言えば、そこには作り手側のアイロニーも感じ取れる。事件の顛末を迎える頃には何とも言えない居たたまれない気持ちにさせられた。

 監督、脚本はこれが長編2作目となるリウ・ジエンという人である。処女作(未見)もアニメーションであるが、少なくとも本作を観る限り、この監督はどちらかというと実写映画的なセンスを持った作家のような気がした。写実的なキャラクター造形、リアリティを重視した美術背景等、個人的には今敏の作品が連想された。もっとも、中国社会の闇に照射した物語やテーマ性は極めてペシミスティックで現実主義的で、今敏の世界観に比べるとよりダークである。
 尚、3作目も今年公開されたようである(日本は公開未定)。またアニメーション作品ということである。

 先述したようにアニメーションのクオリティ自体は、ジブリやディズニーのアニメと比べると見劣りしてしまう。キャラの動きはカクカクしているし、口の動きとセリフのタイミングが合っていない個所も散見される。しかし、かえってこの不自然さがオフビートなユーモアに繋がっているという感じもする。

 例えば、何故か本作には自動車に乗って移動するシーンが多い。右へ左へ車が横切るカットが頻出するが、それがまるで古いアニメを観ているような”ヘタウマ”的な味わいが感じられた。

 かと思えば、バイオレンス・シーンは北野映画のようなクールさで、ある種アート映画のような画面構成も実に巧みである。チープと一蹴できない独特の魅力が感じられた。

 尚、個人的に最も印象に残ったのは、チャンがネットカフェに立ち寄るシーンだった。店に入ると客は誰もおらず、不愛想な店員が受付に座っているだけである。その後、彼はその店を再訪するのだが、どういうわけか先ほどとは打って変わって大量の客で満席になっている。まったくもって意味不明なのだが、本作にはこうしたシュールな演出が他にも見られる。こうしたコメディタッチも本作の面白さの一つだろう。
[ 2023/09/05 00:40 ] ジャンルアニメ | TB(0) | CM(0)

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