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ファミリー・ネスト

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「ファミリー・ネスト」(1977ハンガリー)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 主婦イレンは、夫のラツィが兵役義務で留守の間、彼の家族と一つ屋根の下で暮らしていた。ところが、義父はイレンのことを快く思っておらず、彼女の心休まる場所はどこにもなかった。

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(レビュー)
 出兵した夫の帰りを待つ主婦の苦悩をドキュメンタリータッチで綴った作品。
 ハンガリーの鬼才タル・ベーラ監督の初長編作品である。

 首都ブタペストを舞台にしたモノクロ映画で、当時の貧しい社会状況が手に取るように分かり、最後まで興味深く観ることができた。

 演出は手持ちカメラによるロングテイクを基調としており、すでにタル・ベーラのスタイルの萌芽が見て取れる。イレン、夫ラツィ、義父をフェイスアングルで捉えながら、作品全体が異様な緊張感と閉塞感に覆われている。

 一方、物語は実にシンプル且つ通俗めいたものである。身勝手な夫とその家族に振り回される妻の苦労を淡々と綴るドラマで、取り立てて新味はない。
 ただ、ストイックにテーマを突き詰めたあたりは見事で、タル・ベーラの意欲が画面全体から伝わってきた。

 最も印象に残ったのは、ラツィと彼の弟がイレンの職場の同僚を裏道で強姦するシーンである。例によって、手持ちカメラによるロングテイクで表現されているのだが、この生々しさは尋常ではない。おそらく即興演出だと思うのだが、圧倒的なリアリティが画面に異様な迫力をもたらしている。
 しかも、驚くべきことに、この次のシーンで3人はパブでタバコを吸いながら酒を飲み交わしているのだ。この間に何があったというのか?何の説明もないまま物語は進んでいくので戸惑ってしまった。大胆で意外性に満ちた編集に驚かされる。

 また、当時のブタペストの住宅事情も興味深く観ることが出来た。
 義父から毛嫌いされているイレンは公営住宅の入居募集に申し込むのだが、当選するには相当ハードルが高いらしく、そのあたりの実情が役所の職員との会話で語られている。

 当時、共産主義国だったハンガリーは急成長する首都ブタペストに人口が集中するあまり、住宅の供給が追い付かない状況にあったそうである。その結果、町には浮浪者が溢れかえり、人が住むには適さないような古い空き家に不法滞在する輩もいたということである。都市と地方の格差、政策的な問題等、色々な事情が重なってこういう状態になってしまったのだろう。

 こうした社会背景を盛り込んだあたりにタル・ベーラの才覚が感じられる。当時のリアルなブタペストを劇映画という形で再現したかったのではないか。そんな風に思えた。

 ラストはイレンとラツィ、夫々の一人語りで締め括られる。まるでインタビューのような形式になっていて、半分ドキュメンタリーのような演出になっているのが面白い。ここにもタル・ベーラの徹底したリアル志向が伺える。

[ 2023/12/09 00:08 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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