fc2ブログ










ペトルーニャに祝福を

pict2_320.jpg
「ペトルーニャに祝福を」(2019北マケドニア仏ベルギークロアチアスロヴェニア)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンル社会派
(あらすじ)
 北マケドニアの小さな街に暮らす32歳の独身女性ペトルーニャは、ウェイトレスのバイトをしながら鬱屈した日々を送っていた。ある日、就職の面接を受けに行くがセクハラを受けた上に不採用となってしまう。その帰途、自暴自棄になった彼女は地元の伝統行事“十字架投げ”に飛び入り参加して十字架を獲得してしまう。ところが、それは男性限定の行事だったことから周囲が騒然となり…。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 鬱屈した感情を抱えながら生きる独身女性の自律をシニカルな眼差しで描いたヒューマンドラマ。実際にあった事件を元にしているということである。

 ペトルーニャは容姿は決して良いとは言えず、性格も意固地で不器用。何をやっても上手くいかない人生を送っている。そんな自分に嫌気がさした彼女は女人禁制の伝統行事に参加して、こともあろうか男子そっちのけで幸せになれるという十字架をゲットしてしまう。これが原因で彼女は周囲から反発を食らってしまう。

 警察に連行されたペトルーニャが取調べを受けるシーンが中々強烈だ。ほとんど恫喝に近い取り調べで、これが法治国家のあるべき姿なのかと目を疑ってしまった。実話を元にしているという前振りがあるだけに余計にそう感じてしまう。

 ただ、開き直った人間ほど強いものは無い。色々な不幸が重なったペトルーニャも正にそうで、彼女は厳つい取調官に対して、一歩もひるむことなく抵抗して見せるのだ。これには男性中心社会の中で虐げられてきた女性の怒り、戦いが暗喩されている。

 尚、映画は基本的にペトルーニャの視座で進行するが、この他に事件を取材するテレビ局の女性リポーターの視座も入って来る。彼女はペトルーニャの家族や行事の参加者、町の人々の声を取材をしながら、今回の事件の理不尽さ、旧態然とした男性主義社会の不合理性を訴えていく。実話ベースということを意識させたドキュメンタリックな構成になっていて、これが入ることによってこの物語は真実味を帯びてくる。中々トリッキーな脚本だと思った。

 やがて、物語はこの事件を通してペトルーニャの成長というテーマに向かっていくようになる。
 ここでキーとなるのが彼女の母親の存在である。ペトルーニャがいつまで経っても自立出来ないでいるのは、過干渉な母親の性格、彼女のデリカシーに欠ける言動に原因があることが分かってくる。

 例えば、収監中のペトルーニャに母親が面会に来るシーンがある。彼女はそこで娘を心配するどころか着ている服を見苦しいと批判するのだ。この期に及んでまだこの母親は事の重大さを理解しておらず、それどころか全く娘の気持ちに寄り添おうとしない所に”つける薬なし”である。いくら何でもこれではペトルーニャが気の毒である。

 本作は後半から、この母娘の関係を中心にしたドラマになっていく。結末も決してハッピーエンドとは言い難く、観た人それぞれで解釈が異なってくるだろう。自分も観終わった後に色々と考えさせられてしまった。男性中心社会における女性の生き方、親子関係の難しさ等。

 ただ同時に、ラストのペトルーニャの表情には頼もしさも感じられた。彼女にとって今回の騒動は苦い経験だったかもしれない。しかし、この一件は自分自身を見つめ直す、きっかけになったのではないだろうか。願わくばこの経験を今後の人生の糧にしてほしい…そう思わずにいられなかった。
[ 2023/12/21 00:24 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/2301-15d5ff88