NHKBSで黒澤明特集をやっている。
全作品を放映しているのだが、この際だから見てない作品を見ておくことにした。
これはかなり初期時代の作品でまだ見たことが無い。
「素晴らしき日曜日」(1947日)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルロマンス
(あらすじ) ある日曜日、雄造と昌子は35円を持ってデートに出かける。安アパートの物件を見て回った後、雄造は戦友が経営するキャバレーを訪ねる。しかし、立派な店で惨めな思いをするだけだった。一方、昌子は道すがら出会った浮浪児を見て心を痛めた。昌子を慰めようと雄造は動物園へ連れて行く。暫くすると雨が降ってきた。所持金がたった20円しかない。そこで、2人はその金でクラシックコンサートに出かけることにするのだが‥。
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(レビュー) 戦後間もない時代、貧しくとも希望を追い求めるカップルを、ユーモアとペーソスで綴った黒澤明初期時代の作品。たった一日のドラマだが、挫折と苦闘、希望に奮い立つ姿が凝縮された形で作り込まれていて、小品ながら中々濃密な鑑賞観を残す。
当時の風俗と人間を様々な角度から切り取ったところが面白く見れる。
道端で草野球をする子供達、アパートの雇われ受付人、キャバレーの厨房で残飯をあさるタカリ、道端で握り飯を食う浮浪児、コンサートのチケットを買い占めるヤクザ等々。時代を映すのが映画だとすれば、本作はまさにその形容が当てはまるような作品だ。後の傑作「酔いどれ天使」(1948日)や「どん底」(1957日)等にも通じる、黒澤明ならでは市井に根ざした鋭い視点を確認できる。
ただ、所々の大仰なセリフは余りにも芝居がかっていてリアルさに欠ける。例えば、雄造のアパートで愛を確かめ合うシーン、誰もいない音楽堂でコンサートを再現するシーン等は個人的には受け付けなかった。ドラマチックにするべく過剰な感情の噴出という気がしてシラけてしまう。
また、女優に今ひとつ魅力を感じなかったのも難。ダメ男を支える良妻賢母のキャラは都合が良すぎて、かえって作品への感情移入を拒んでしまうところがある。雄造と同じ貧しい出自であるがゆえ、何かしらのコンプレックスを彼女にも持たせて欲しかったと思う。